『新 田中角栄名語録/小林吉弥著(プレジデント社)』を古本で読みました。
12月8日のこのブログで「田中角栄 100の言葉」という宝島社編集の本をご紹介しましたが、同じ古本屋の棚に隣同士に置かれていました。
思わず両方とも手に取り、結局二冊とも読むことになりました。
今回は政治評論家で、23年間に渡り田中角栄取材にエネルギーを注いだ方が書いた田中語録です。
こちらも興味深く読みました。
「人を叱るときは“サシ”でやれ。褒めるときは人前でやることだ。」
という言葉が印象に残りました。
私の仕事人生で、上司であった人達の多くが上記の正反対のことをしていました。
皆の前で厳しく、見せしめのように叱り、褒めるときは二人きりの時に「まあ、よくやったかもな・・」って感じで(^-^;仕方なく褒めたという印象でした。ほんとは褒めたくなかったんでしょう。
それから首相官邸の警護をしていた出入口の署員ボックス(当時の警視庁麹町署の管轄)に向かって、クルマで通るときに、わざわざ自分で窓を開け、片手を上げて必ず『ご苦労さん』と声をかけていたエピソードが載っていました。
田中派担当記者が「なぜ『ご苦労さん』とまで言うのか」と愚問をぶつけると、「当たり前のことじゃないかね」とサラリと言ったそうです。
私が東京勤務時に、麻布十番納涼祭りという数十万人規模の入場者がいるイベントに参加したのですが、当時の局長が休日の東京の現場まで地元からわざわざ訪れて「ご苦労さん」と声を掛けてくれ、しかもイベント用のTシャツにすぐさま着替えてくれて、テントの前に立ち、お客さんの呼び込みをしてくれたのを思い出しました。
やろうと思って出来ることではないと思いました。
ほんとうにそういう人なのです。
しかも、前の人通りが激しく、落ちているゴミを箒と塵取りで率先して掃除してくださったのも印象的でした。
ようするに、田中氏もそういうことなんです。
心から思っていないことは自然にやることは出来ないのだと思います。
上記の他にも角栄氏らしいエピソードが満載で、参考になる言動がたくさん載っていました。
前回の田中角栄本に続いて、勉強になる本でした。
『思えばたくさん呑んできた/椎名誠著(草思社)』を読みました。私にしては珍しく“まっさら”の新刊本です。
椎名さんといえば、焚火、海、川、山、異国、秘境の地などで色々な酒を飲んでいる様子を今まで何度読んだことでしょうか。
その度に、椎名さんと酒、特にビールは切っても切れない関係にあると誰もが感じていたと思います。
その「酒と椎名さん」の関係性の「集大成」が本書と言っても過言ではないでしょう。
椎名さんは作家になる前に銀座の会社勤めをしていて、その頃から私も新人時代に経験した先輩との飲み、会社の宴会のあの頃の飲みも経験していて、そんな経験をしてきた人ですから、その後の数十人での“怒涛の焚火前での男達の酒”なんてなんでもないわけです。
むしろ、今の若い人たちの宴会嫌いな様子や、そもそもビールが苦い、酒が嫌い、なんてそんなこと理解の範疇に無いことでしょう。
そのような飲み会の話以外にも、シングルモルトウイスキーやグラッパ、ラム酒の話など、じっくりと国外で飲んだ酒についても語ってくれています。
さらに酒と共に何を肴にしたのか、どんな人達と、どんな状況で、どこの海・川・山で、どこの国で何を味わったのか、今までの椎名さんの本にも様々なことが書かれていましたが、この本ではその“おいしいところ”を選りすぐって紹介しています。
酒好き、椎名さん好きな方は読んで損のない、面白本でした。
読んでいるうちに何か酒が飲みたくなってきた・・。
『田中角栄 100の言葉 -日本人に贈る人生と仕事の心得-/別冊宝島編集部・編(宝島社)』を古本で見つけ、読んでみました。
2015年2月に初版発行していて、私が入手した本では、同年7月で既に第9刷発行となっています。とても人気があったことがうかがえます。
私も今になると、角栄氏の発言や行動はとても気になります。
特に今の政治家の様子を見ていると、それと比べてみたいと思うのです。
100ある言葉から私も気になったものをいくつか挙げてみたいと思います。
〇人の悪口は言わないほうがいい。言いたければ便所で一人で言え。自分が悪口を言われたときは気にするな。
・・今の人、政治家は特に、こんな人はほとんどいないと思います。
〇人間誰しも、若いときはみんな偉くなりたいと思うものだ。しかし、そう簡単じゃない。経験も、知識も、素養もなくてしゃべってばかりいるのは誰も相手にしなくなる。
・・政治家にも多いSNSを駆使して“ネット大道芸”よろしくペラペラとしゃべっている薄っぺらい輩を思い出しました。
〇どんな発言をすればマスコミに気に入られるか。大きく書かれるかと考える人間がいる。こういうのが一番悪い。政治家としても大成しない。
・・今、こんなのばっかり。
〇いい政治というのは国民生活の片隅にあるものだ。目立たずつつましく国民の後ろに控えている。吹きすぎて行く風---政治はそれで良い。
・・国民はささやかな幸せを求めているだけなのに、大きなことを言って前面に立つ目立ちたがり屋の政治家のあの顔、この顔が浮かびます。
〇人の悪口を言ったり、自分が過去に犯した過ちを反省せず自分がすべて正しいとする考え方は国のなかでも外でも通用しない。
・・私もそう思っていたが、なんの反省もせず、自分が正しいと言い張り、再び表舞台に上ってきたあの男のことを言っているみたいだと思いました。
〇戦争を知っている世代が社会の中核にある間はいいが、戦争を知らない世代ばかりになると日本は怖いことになる。
・・今、まさになろうとしています。
以上、まだまだ気になる言葉ばかりでした。
この本の続編のような本も同時に手に入れているので、また読みましたら感想を書きたいと思います。
『すっぽんの首/椎名誠著(文春文庫)』を古本で見つけ、読みました。
1990年代後半に小説新潮や別冊文藝春秋などに書かれたエッセイをまとめたもので、単行本としては2000年に、文庫化は2003年となっていました。
椎名さんの年齢は文中にも何度も出て来ますが、50歳くらいの頃です。
食べ物の話や、海外のトイレ事情、外国のホテルでの怪談など様々な出来事が紹介され、当時の全盛期の面白さで書かれていました。
沖縄のとある島に行ったときの話も面白かった。
その“スジ”の方がたぶん“ヤバい”理由があってその島に身を潜めているのだが、旅館や食堂、飲み屋などは「南原様」と島で呼ばれているそのスジの人専用の席がいつも用意されていて、めっちゃヤバそうですが、椎名さんは会って、一緒に飲みに行ったりして仲良くなったりしています。
しかも、その島の警察署長も同席していて、署長さんは南原様の同窓生らしい・・。
その「南原様」との“可笑し”な付き合い方の話も面白かった。
椎名さんらしく、まったく恐れたりしていません。
また、椎名さんがストアズ・レポートという業界関係誌の編集をしていた若かりし頃、あの三越の岡田氏が君臨していた時代の武道館での記念行事のことや、パリ三越の開店行事などについても思い出して書かれていて、常軌を逸した岡田氏の行動についても書かれていました。
当時椎名さんは27歳。
提灯記事を書き、その狂乱の世界にいたときのことについても詳しくふれていました。
その後の岡田氏の運命は皆さんご存知のとおりです。
「満つれば欠くる」という言葉を地で行くような展開でした。
久しぶりに“イキのいい”頃の椎名さんの文を読んで、自分も学生時代に戻ったような気になりました。
懐かしいエピソードがいっぱいの本でした。
最近のコメント