『近松・恋の道行』・・感動の中で【1/2】

外苑前の日本青年館まで足を運び、『近松・恋の道行(宝塚歌劇・花組東京特別公演)』を観て参りました。
主演は花組・三番手男役の愛音羽麗(あいね・はれい)さんと、娘役で宙組への「主演娘役」としての組替えが決定している実咲凛音(みさき・りおん)さんです。
脚本・演出は植田景子先生。宝塚で初めての女性脚本・演出家です。
女性の脚本家を募集してもいないのに応募して相手にされず、何年もかかって歌劇団に入団した「あきらめない」人です。
私が見た植田先生の舞台やDVDでは、「あきらめない」「夢に向かって突き進む」が今までのテーマでした。
その後の星組・安蘭けいさんのサヨナラ公演では「どんな逆境でも淡々と自身の信じるところを歩む」ことの尊さがテーマに。より、人の生き方に深く突っ込んでいった感がありました。
宙組・大空さんの「クラシコ・イタリアーノ」の脚本では、「人それぞれ、さまざまな生き方こそが人として美しい」・・というテーマになっていて、植田先生は今の世の中にとっても、私にとっても興味深いテーマを次々と提示して、いつも心の奥底にぐっと迫ってくるのです。
先生の書かれた著書「 Can You Dream ? 」を職場の女性、お酒の女神と心配性の天使と回し読みしながら三人で号泣読みし、その後すぐに感想文を便箋にしたため先生にお送りしたことがあります。
読んですぐにです。
そうしたら、先生からクリスマスに素敵なカードをいただきました。
先生の姿はテレビや雑誌などでもお見かけしていますが、ますます大好きになりました。
・・と、植田先生のエピソードが長くなってしまいました。
それほど先生が描かれる作品はテーマが重要なのです。
そして今回は「近松」です。
今回の先生のテーマは、人間の、・・男女の、根源的なテーマ、『愛』そのものです。
人間の「性(さが)」を深く捉えた力作です。
昨今の草食男子がはびこり、メールでおつき合いの申込みも、“相手を振る” こともでき、ウエットで深い付き合いなど皆無&絶無となった世の中に、あえて「愛する人のためなら“死”を選ぶ」という心中ものです。
すべてを投げ打ってでも成就する『愛』が、どんなものか、近松の浄瑠璃をモチーフに見せてくれる・・・そんな感じなのです。
「ついに、矛先はここに来たのか」と、私も本気になって見ました。
近松の「生玉心中」「曾根崎心中」が巷で評判になっていた頃の、江戸時代の大阪が舞台です。
天下太平の世でありながら、元禄バブルがはじけ、長引く不況の中、なんとなく先行きの見えない不安感のある時代、封建制度や家長制度に縛られて思いのままに生きることができなかった時代には恋に殉じて、いくところまでいってしまう男女の姿が、何かある種の感慨を人々にもたらしたのかもしれません。
それは、今の世にも言えることなのかもしれません。
“お手軽”な「愛」がそこここに跋扈し、もう命をかけた愛なんてものが風に吹かれてどこかにいってしまった今こそ「愛」について「男女」についてテーマにしてみるのは、この時代には逆にとても“深い”ことなのかもしれません。
心中ものの二人の人形が主演ふたりのうしろで、操り人形を模した踊りとして象徴的に繰り広げられ、ストーリーは近松の心中ものそのままに植田先生が練りに練った形で展開します。
目が離せませんでした。踊りも、衣装も、舞台装置も、歌も、芝居も、何もかもがこの現代に心中もの浄瑠璃の如く進行していくのです。隙がない、無駄な演出がまったくない話でした。素晴らしいです。
今回の演目の前置き的、解説的な部分が長くなってしまいましたので、愛音さん中心の花組生の方たちの話題は次回で・・・。興味のある方はご覧くださいね。
【NowPlaying】 算段の平兵衛 / 桂文珍 ( 落語 )
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