湯上がり
世を去ってから早五年くらいでしょうか、「山本夏彦」さんの著作をまとめた文庫本『最後の波の音』を“ぱらぱら”とめくっていたら向田邦子さんについてふれている部分がありました。
偶然、向田さんの妹、向田和子さんが最近出演したラジオの録音を聞きながら、今このブログを書いています。
『最後の波の音』を読んでいて気になったのは、向田さんが著作の中で使っていた言葉についてふれていたところです。
「風呂上がり」と言わずに「湯上がり」という。その言葉があって、「湯ざめ、湯加減、湯銭、湯づかれ」などの言葉があるわけで、「風呂上がり」では、パンツいっちょのおとうさんが風呂上がりにその辺をウロウロしている姿くらいしか想像できません(^_^;)
戸障子は、「あけたて」といって、「あけしめ」を使わない。これも「あけたて」がいいですよね。
「まだ生き残っている言葉であれば、古い言葉を使う」と山本さんは書いておられましたが、私もそうしたいと感じました。「七味唐辛子」も元々は「なないろとうがらし」と読ませたかったらしいのですが、今じゃ“シチミ”が定着しています。が、私が子どもの頃は「なないろ」とか「なないろとんがらし」と言っていました。
「視線」と言わずに「目線(めせん)」と言うのも違和感があります。
もともとテレビやカメラマンなどの業界人が、「はい、○○ちゃん、目線(めせん)ちょうだいっ!」なんてやっていた業界用語のような気がするのですが・・。
職場で、公の文書が回ってきたときに「市民の目線(めせん)に立って、業務を遂行し・・」などと書かれているとがっかりします。大のオトナが“めせん”かいっ!・・と思わず突っ込みをしてしまいます。
「つむじまがり」・・つむじは曲がったところについていて、そういうことがあると思うのですが、「へそ曲がり」は変だと思うこともあります。へそは曲がってついている人なんてねぇ、いないよ!
「二人組(ふたりぐみ)」はあっても「ににんぐみ」は変だと思いますが、NHKは「ににんぐみの強盗」って言ってます。・・変だと思うけどなぁ。
「告白」は「白状」、「世帯」は「所帯」・・“所帯やつれ”って言うじゃないですか、世帯やつれや、世帯くずしって無いもの。
「やばい」は昔、ヤクザ者が矢場の裏側で女に客を取らせ、そこに役人が踏み込んだときの状態を「矢場い」と言ったもので、堅気のもの言いではないのに、いい若い女性が、フランス料理を口に運んだときに「やばいっ」と言って美味しいの意をあらわしているのはやっぱり変だと思います。
そんなこんなで、文庫本をめくっていて感じた言葉のことについて今夜は書いてみました。
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