リアル・ビートルズ世代の著書
『真実のビートルズ・サウンド/川瀬泰雄(著)・蔭山敬吾(編)_学研新書』を読みました。
これは音楽プロデューサーであり、井上陽水や山口百恵、浜田省吾なども手がけた著者のビートルズ・サウンドのわかりやすい研究本です。
40年間音楽制作の現場にいた著者の説得力ある解説が魅力な本だと思いました。
著者は1947年生まれですから、まさにビートルズ・リアルタイム世代です。
私は最初に著者紹介の部分を見たときに、ちょっとイヤな予感があったのです。
たいていのリアルタイム・ビートルズ世代は、
①本当は、当時あまりよく聞いていない(ビートルズばっかり聞いていたわけではない)。
②当時は、情報自体が乏しく、いわゆる“がせネタ”をいまだに大事に覚えている場合が多い。
③思い入れ優先で、楽曲やサウンド自体に対する深い研究をしていない。
④後追い世代に対して“威張る”傾向が強い。
などなどの傾向があるのですが、この著者は違います。
書かれていたエピソード等は、割と近年の研究で明らかになった事項も多かったのですが、でも、ひとつひとつのアルバムごとに、そして一曲一曲の楽曲ごとに、著者の思い入れと深い愛情と、たゆまぬ研究心が感じられ、共感を呼び起こされました。
さらに、ビートルズのメンバーひとり一人に対しても、とても優しい気持ちでみていることがわかりました。
文面を見ても、たとえば“スネア”という言葉が出てくると、ドラムセットの中の一つでドラマーの腹部の前にセットされるもので・・などと、楽器に詳しくない読者にもすぐにわかるように丁寧に解説していたり、その他の専門用語とも言えないくらいに一般的になっているレコーディング用語なども“噛んで砕いて”説明していることに関心しました。
これならロック初心者、ビートルズ初心者でもCDを聞きながら、楽しみながら理解することができるだろうと思いました。
マニア的に言えば“物足りない”部分もあるかもしれないけれど、でも、気分や感情を先行させず、しかも知識をひけらかさず、きちんと書かれた「ビートルズ本」であると思いました。
これからビートルズをちょっと聞いてみよう、とか、ビートルズが好きだがもうひとつ深く掘り下げてみたいという人にはぴったりの本だと思います。
“おすすめ度”85点の良書でした。
【NowPlaying】 You Know My Name (Look Up The Number) / The Beatles ( Rock )
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