安蘭けいさん最後の公演
東京日比谷の宝塚劇場では、現在宝塚・星組トップスター「安蘭けい」さん最後の公演、そして娘役トップスター「遠野あすか」さんにとっても最後の公演が行われています。カウントダウン状態です。
ミュージカル「My dear New Orleans」は、サヨナラ公演というには、地味な印象のものでした。
不遇な環境と、運命に翻弄され、しかも愛する女性は自分の手に届かぬところにいて、なかなかほんとうの気持ちを打ち明けられないという・・ストーリー的にはつらいもので、ただひたすら「よいことがある、きっと」と信じて、真摯に大好きな音楽とともに生き抜くというものなのです。
逆に言うと、「安蘭けい」さんだからこそ、この役を演じ切れて、観客に感動を与えられるのだと思いました。
実力も風格も身につけたトップスターでなければ、このミュージカルを最後まで持たすのは難しいと思います。
この“つらい”ストーリーをさらに感動的にしたのは、「ゲイブ」役の「夢乃聖夏」さん。
人種差別のために、身重の奥さんを医者に診てもらうことができず、無理矢理医者にかけあうも、無残な結末が待っていて・・・。あまりにも悲しい結末に涙が出そうになりました。
妻をこよなく愛し、家族想いの熱血漢を見事に好演!夢乃さん、素晴らしかったです。
そして星組全体が、この作品を単なる一途なミュージシャンのストーリーにせずに、感動が奥底で渦巻くような作品に仕上げていました。
さすが、実力の星組です。
悲運と病気と、不遇な家族に自身の人生がきりもみ状態でがんじがらめの急降下人生を送る「ルル/遠野あすかさん」は、これも複雑な心境を押し隠すような女性を好演していました。
ただ、“本”自体に「ルル」の「ジョイ・ビー/安蘭けいさん」に対する心情を吐露するような部分が無く、いまひとつ「ルル」の人物像が“霧の中”という印象も持ちました。
でも、そういうストーリーなのでしょうね。
ラストの「ルル」の最後の話を弟役の柚希さんがするときには、しんみりとしてしまいました。
そして、「ゲイブ」が見ることなく生まれてきた長男が大きくなったシーンで「ゲイブ」の帽子を被っていたのが、ひときわ涙を誘うエピソードになっていました。
いいミュージカルでした。
ショー「ア ビヤント」は、それこそ、星組全体でトップスターを送り出すという、目的がはっきりしたもので、最初から最後まで“出し惜しみ?”することなく、全身全霊を込めた星組の安蘭さんに送るメッセージとなっていました。
衣装、舞台装置も、ダンスも歌も文句なしの“宝塚いいとこ取り”の満点ショーでした。
安蘭さんと柚木さんの「頼んだぞ」「まかせてください」的なシーンも、そこまでやるか・・と一瞬思いましたが、「やっぱりいいね、これもありだ!」と喜んでしまいました。
遠野さんも目一杯歌い、安蘭さんも堂々と最後の舞台を務められ、ファンとしては、最高のショーを最後に堪能できるものだったと思います。
安蘭さん、遠野さん、素晴らしいステージをありがとうございました。
これからもDVDを見たり、また別の舞台に立たれるのであれば、それも拝見したいと思います。
最後までがんばって!!
【NowPlaying】 Round about Midnight / Miles Davis ( Jazz )
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