浴びるように落語を聴いた人の「落語論」
『落語論/堀井憲一郎著(講談社現代新書)』を読んでいます。
このコラムニストが寄席へ足を運ぶのは、読んでいるとわかるのですが、たぶん“毎日”なんじゃないかと思います。
噺家のしゃべりを「歌」に例え、その歌いっぷりだけで内容がわからずともうっとりすることがあるというようなくだりもあって、すでに生活そのものが落語とともにある人なのだな、と驚きをもって感じました。
最初の方に書いてあるのですが、まだ落語にふれていない人、あるいはあまり寄席の経験がない人についての記述があります。
私も経験したことがあるので、ちょっとそのあたりを書いてみたいと思います。
まずは、落語はおもしろいとは思うんだけど、一度聞いたことがある出し物がでてきたりすると、「もう知っているんですよね。」などと言う人がいます。
これは、落語を、ただ面白いストーリーを“聞き”、“知る”ことだと思っている人の典型的なパターンです。
落語は、いわば“ライブ”であり、その場で消えていく“語り・ことば”を聞くもので、寄席の客、演者、その日の空気、気候、時節、すべてが混じりあってできるもので、同じ演目でも何度でも楽しめるものです。
「そのゲームはクリアしました」的なものの見方しか、まだできていないのです。まだ“お子ちゃま”ゾーンにいる人なんじゃないか・・と思ってしまいます。
あとは、「テレビ、ラジオ、録音などで聞いているから、だいたい落語なんてどういうものかわかる」という人です。
これは、“舞台モノ”全般にも言えることですが、ようするにテレビなどは、あくまで“カタログ”程度の情報量しか無いということをわかってもらいたいということです。著者に私も同感しました。
実際にその場にいなければ感じ取れないことが“山”と有り、落語などはせっかく演者が向きを変えて登場人物をあらわしているのに、カメラが次々と角度を変えてしまい、台無しになってしまうこともあります。ようするにテレビ向きじゃないのです。
テレビなどのメディアでわかることは、実際の寄席に行くことで得るものと比べると、せいぜい20%程度じゃないでしょうか。
私の好きな宝塚歌劇に関してもそうです。
テレビで観たことがあるけど、なんていって「つまらない」などと言う人もありますが、やはり落語と同じことだと思います。
実際にその現場に遭遇しなくては、ほとんど何もわからないのです。それは、著者同様、寄席や劇場に行った私の実感です。
それに、何時間もそういうものを味わうという、「オトナ」の姿勢がとれない人が多いのかもしれません。
ストーリーを知っていればいい、とか、だいたいこんなもんだ、などという“味わう”こと自体の喜びを知らない人が増えているのかもしれません。
もったいない話です。つくづく・・・。
ゲームじゃないのです。プログラムされたものがそのとおりに進行するのでなく、噺家の存在から、語り、しぐさ、その場の雰囲気を感じ取って芸を味わうのです。
そして演劇などの舞台では、多くの人の“ちから”が結集してできる総合的なものが観客共々喜びに変わるのです。
わかってもらえるとうれしいのですけれど。
きょうは、落語の話から、舞台は実際にそこに行って観て、なんぼのものだというお話に展開してみました。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
【Now Playing】 フィールズ・オブ・フォーチュン / シークレット・ガーデン ( Instrumental Music )
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