リマスターを聞きながら、もっと味わおう ! Beatlesの4人を
ビートルズのリマスター盤について、何度かこのブログに書きましたが、ただ音の良さやビートルズの楽曲の良さに喜んでいるだけではないんですよ。
ひとりの人間として聞いていると、その曲間に、アルバムとアルバムの間に、見え隠れするものがあるのです。
ビートルズが存在していた、わずか7~8年間に出した十数枚のアルバムを通して聞くことによって、4人のビートル達の苦悩や人となりが見えてきたりします。
ジョンは、早くも初期の段階でため息をついたり、落ち込んだり、あまりの苦しさに叫びだしたりしています。
3枚目のアルバム、ア・ハード・デイズ・ナイトではB面の中にちょっと暗い部分が曲調として見えてきます。
4枚目のフォー・セイルでは、ノー・リプライやアイム・ア・ルーザーで内省的な部分をはっきりと見せはじめるのです。ここを見逃すと、そのあとのアルバムの聞き方が平面的で、つながりのないものになってしまいます。
つまり、“うかつ“な聞き方をしていてはビートルズはほんとうに楽しめないということです。
5枚目のヘルプでは、いよいよ自分が置かれた「富も名声も人気も、考えうるものすべてを手に入れたのにそこには何もなかった」という、最悪の苦悩の状況が楽曲ヘルプとして絶叫されます。
ギターのくるくると落ちていくようなフレーズを見逃してはいけません。さらに追いかけてくるコーラスが最後まで追いつけないという曲の展開・・ここが大事なのです。
ラバーソウルでは、イン・マイ・ライフで、人生のため息をついています。
ホワイトアルバムでは、アイム・ソー・タイアードで疲れきり、さらにヤー・ブルースでどん底状態の自分をさらけ出します。
さらに、ジュリアで、決別した母と新しいパートナー、ヨーコについてしみじみと歌う・・・。
ジョンだけでもこんなに色々と感じることができます。
ポールは、たぶん初期の頃には恋人ジェーン・アッシャーとの現実の恋愛と、自分がつくり出す“愛の歌”とのギャップを感じていた“フシ”があります。
「恋を抱きしめよう」では、アッシャーからインプレッションを得てわりとほのぼのとした曲調ですが、サビの部分はジョンがつくり、「人生は短いぞ、甘くはないぞ」とじりじりするようなメロディをつけて皮肉っています。
また、ポールは若いうちに母親を失い、暖かい家庭に飢えていたようです。ミュージカルナンバー「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」でのポールの歌い方は、当時のビートルズには似つかわしくない、情感あふれる良いものになっていますが、ポールはこんな曲を日常に家で聞いているような家庭にあこがれていたのではないでしょうか。
その後もイエスタデイや、ミッシェル、マザー・ネイチャーズ・サン、ブラックバード、ハニーパイ、ユア・マザー・シュッド・ノウ、アイ・ウィル、マーサ・マイ・ディアなど美しい小品をたくさん作り上げていますが、ポールのささやかな願望のようなものを感じるのです。
最後には、ビジネスマンみたいなアッシャー(今もビジネスで活躍中です)と別れて、リンダと結ばれ、トゥ・オブ・アスで、「オン・アワ・ウェイ・ホーム」とアコースティックギター片手に歌います。
生涯安住の地を見つけた瞬間を切り取っているようです。
ジョージは、自分の楽曲がなかなか取り上げられない中、アイ・ニード・ユーなど恋人から奥さんになったパティとの日常の気持ちを表現したりしています。
また、その愛妻を奪ったクラプトンとの関係が密接なのはホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープスでの競演でわかります。
あるときは、シニカルであったり、宗教的にまで発展したものの考え方は、タックスマン、オンリー・ア・ノーザン・ソング。ラブ・ユー・トゥー、ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユーで聞くことができるし、ちょっと“いらいらさん”であるのは、ブルー・ジェイ・ウェイで聞くことができます。いやあ、楽しいったらありゃしない!
そして、最後の最後、アルバム「アビー・ロード」で、サムシングとヒア・カムズ・ザ・サンを発表し、まさに『満開』です。ついにポールやジョンと肩を並べる作曲をするようになるのです。
ヒア・カムズ・・は、その祝福のように輝いて聞こえます。
リンゴは、デビュー曲ラブ・ミー・ドゥで、いきなりプロデューサーにドラマーを差し替えられたことで落ち込みます。それは、今回のリンゴが叩く方のリマスター盤でもなんだかもっさりとしたドラムで聞くことができます。
ドント・パス・ミー・バイは初期の頃、記者からのインタビューで「曲はつくらないのか」という、一番聞かれたくない質問に応えるため、長年にわたって作られたものと思われます。初期の頃からタイトルだけは、こんなタイトルの曲を作っているのだ、と言っているので。
「“ウソ”から出た“マコト”」的な曲かもしれません。
一時はビートルズに嫌気がさして、脱退したこともあり、その際一人で海に行ったときに作られたオクトパスズ・ガーデンは、最後のアルバム「アビー・ロード」で花咲かせます。実にいい曲だし、ビートルズ全員演奏もナイスプレイ!です。
それに、ジョンの曲だけどハリウッド調のアレンジでグッド・ナイトを歌うリンゴは、やはり“役者やのう”っていう感じです。人間味がそのまま歌に表れるという、努力だけでは得られない、天性のものを感じるのです。
あとは、リンゴのドラミングがどれほどビートルズの楽曲を強力なものにしたのか、というのは、聞き込んでいる人にはよくおわかりになると思います。
リンゴはロック史上に残る偉大なドラマーです。
以上が、アルバム、楽曲から感じる4人です。
こんな楽しみ方もリマスター盤を聞きながらいかがでしょうか?
【Now Playing】 Honey Don't / The Beatles ( Rock )
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