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2009/12/17

『東京に暮らす』

20091217_livingintokyo
『東京に暮らす(LIVING IN TOKYO)/キャサリン・サンソム著(大久保美春訳)「岩波文庫」』を読みました。

これは、イギリスの外交官である夫に伴って来日した著者が昭和初期(1928~1936年)の東京の街や人々の暮らしを描いた日本印象記です。
著者の挿絵も多数有り、たいへん楽しくて、ほのぼのとした日本観察日記となっています。

読んでいると、当時の東京は建物や乗り物についてはかなり発達していたようで、イギリス人の著者から見ても目を見張るものがあったようです。
電車に乗り込む日本人は列も作らず我先に乗り込むのに、駅から出ると、いつもののんびりとした日本人に戻る、などと書かれていて、当時でもそんなことがあったのか、などと驚きました。

盆踊りでの木々がうっそうと茂る暗闇、大きな寺の建物に至る階段、夏の夜の暖かな空気の中に灯る提灯に照らし出された踊り、種まき・田植え・もみすりを再現したようなリズムのステップ、陶酔的な、自己主張のない、非個人的な心の琴線にふれるものであった、などと書いていて、たいそう感激した様子が描かれていました。

その他、金持ちも、そうでない人も皆質素な暮らしをしていて、規律を守り、落ち着いているという様子なども書かれていて、今はそんなことも無くなってしまったな、と思いました。
昔は、金持ちも、貧乏人もどちらも品があったようです。私が小さい頃でもそんな感じだったかもしれません。

著者が庭師に庭造りを頼んだときの、親方の仕事っぷりに感嘆する様子などには、こちらも「そうだろう、そうだろう、日本の職人ってのは、そういうもんだ」と思わず、笑顔になりながら頷いてしまいました(^^)

さらに、日本人の、特に女性の無駄のない優雅な動きや、日本人の家には床の間があり、季節ごとにそこに掛けられる絵や、置かれる壺などの美的感覚が素晴らしく、日本人の芸術に対する造詣はそこから来ているのでは、というくだりには、「ああ、そうなのかもれしない」とあらためて感じたりもしました。

奥付を見てみると、1994年から2009年の間で、すでに23刷になっていますので、けっこうベストセラーなのかもしれないですね。
これは面白くて、興味深い本でしたよ。

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