バイアウト/幸田真音
『バイアウト(BUYOUT)/幸田真音(文藝春秋)』を読みました。例によって、ブックオフで半額にて購入。
企業買収の進行を物語の軸に、TOBを仕掛ける、どうみてもド○キ○ーテを想定して書かれている会社の取締役会の内情や、企業買収の対象になってしまった音楽産業の企業内部で起こる上を下への騒動を伴う対応が手に汗にぎるような展開で書かれています。
さらにそれに絡んで登場人物の生い立ちから出生の秘密まで子細に描かれ、ライ○ド○としか思えない企業の親玉が逮捕されるシーン、○上ファ○ドのような企業価値に比して株価が安価で、株主対応を丁寧にしていない企業を買収し、売り抜けて行く企業の話も絡められ、人生模様や経済社会の裏側まで、ものすごい勢いで書かれています。
会社そのものが何のためにあるのか、その意味を考えさせられたり、企業買収という冷酷な物語の中に、登場人物一人ひとりの人間模様まで散りばめられ、これはあっという間に読み切ってしまいました。
幸田真音さんの小説に登場する人物は、主人公を含め、なんとなくクールで、情緒的に過ぎない人、そして読者側から想像すると、いい女といい男ばかりのような気がしますが、逆にそれがスピーディーな展開の経済小説には欠かせないような気がします。
あまりに普通の、情緒的な人ばかりが出てくるとそちらにばかり気を取られてしまいますし、クールな登場人物だからこそ、こちらが感情移入し過ぎることなく、逆に人間模様の中にまで入り込んでいけるのだと思います。
400ページに達する長編ですが、一気に読んでしまいました。
半額の本で、“四倍”くらい楽しんじゃったかな?(^_^)!
【Now Playing】 BQE / Hiromi ( Jazz )
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