紫子(ゆかりこ)を見た!
宝塚歌劇・月組公演『紫子/ Heat On Beat 』をすでに見ていたのですがアップしておりませんでした。
きょうはそれについて。
ミュージカル「紫子」は、1987年「峰さを理」主演の星組で公演され、大好評。
名作として再演の呼び声高かったものを、今回新トップ「霧矢大夢」さん率いる新生月組が再演するものです。
実は、1987年当時、私は本場大劇場でも東京宝塚劇場でも数回観ました。しかも、宝塚でも東京でも千秋楽も観ています。
この作品は、平安末期の「とりかえばや物語」を戦国の武家社会に置き換えた木原敏江氏の漫画を元にミュージカル化したものです。
当時は、そのスケールの大きさ、想像を絶する凝ったセット、双子の替え玉という複雑かつ、ベルばらにも通じる宝塚的な設定がまさに“当たった”形になり、大人気でした。
安芸のとある大名が病に伏し、双子の妹が(当時は双子が忌み嫌われたため)内密に養家に育てられ、養家では跡継ぎがないことから、武芸一般も学んで男勝りな部分もある女性に育った。
そこに大名家から病に倒れた領主の身代わりの話が来て、自分が領主と双子の妹であることを知り、やがて兄の替え玉となり、兄の志と領国を守るため我が身を投げ打つ話です。
恋も投げ打ち、ストーリーは戦いも、恋も、そして嫉妬や、運命に大きく左右されることになる。
さらに実際は女性である大名にそれと知らずに嫁いだ姫の葛藤まで一気に描きだします。
まあ、見ればわかるのですが、領主の碧生(みどりお)、紫子(ゆかりこ)を主役の霧矢さんが一人で演じて、「男」と「女のふりをする男」、「女」と「男のふりをする女」という4パターンを演じ分けるわけで、たいへんなこってす!
それをきりやんは見事に演じ分けた上に、思わず観客を笑わせるその“とりかえばや”の妙味も見せ、見ているこちらは完全に紫子に感情移入です。これは初演の峰さんが壮大な感じで錦絵のような物語を舞台で展開させていたのとは逆に、私達はきりやんの碧生・紫子二役の領主に仕える身になったような気にさせられるのです。
観客はまさに一点集中といった感じでストーリーにのめり込みます。
ですから、観客の心は最後まできりやんについて行き、家来や蒼乃さん扮する舞鶴姫との別れのシーンでは、会場は“すすり泣き”があちこちで起こり始めました。
かくいう私も涙が止まらなくなりました。
今回は、初演時のセットとは比べるべくもない小規模の舞台装置でしたが、それを補って余りある熱演がありました。
きりやんの恋人役の風吹を演じた「青樹泉」さんは、かつての日向薫さんの無頼な感じよりも、ちょっと男臭いけど、心根は真面目ないい男となり、好演!(ちょっと可愛過ぎたかな(*^o^*))
紫子に尽くす近習頭・定嗣を演じた「明日海りお」さんは、初演の紫苑ゆうさんよりもさらに若々しく、爽やかでしかも律儀な、好青年となってこれも好演!見ていて、全力で舞台に立っているのがわかりました。二部のショーのことなどかまわず熱演しているようで、その若さと果敢さに驚きを持って見ていました。素晴らしいっ!!
そのほかの方達もどなたも唸るような好演。月組の組子は皆「霧矢」さんに全力でついて行ってるように感じました。チームワークもバッチリです(b^ー°)
ショーは、瀬奈さんのサヨナラ公演と同じものを焼き直したもの。
何と言っても月組に久しぶりにトップ娘役が加わったことで、宝塚本来の美しい舞台がより映えるようになったことが一番の印象です。
こちらも月組のチームワークが素晴らしく、楽しめましたよ。
「明日海りお」さんは、ハムレット公演中で不在の「龍真咲さん」が本公演で演じていた役もこなす活躍ぶりで、それこそ全てを振り絞り、持てるものを出し切っているようでした。
きっとこの経験は後々素晴らしいものとなって生きてくるでしょう。それも楽しみです。
全体として、きりやんの初トップは満点以上のものでした。
新トップという感じは「大空」さんのときもそうでしたが、感じませんでした。
今までの経験が十分生かされた、堂々のトップスターだと思います。
霧矢さんのトップでの大劇場公演「スカーレット・ピンパーネル」が楽しみになりました。
【NowPlaying】 たいこ腹 / 桂雀松 ( 落語 )
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