「オセロー」から感じたこと
このあいだハムレットを三十年ぶりに読み返して、あらためて感じることが大きく、そのまま調子に乗って四大悲劇のひとつ「オセロー」も読んで見ました。
これも三十年ぶり。
これは、将軍である主人公が、ムーア人であり、肌の色がアフリカ系で黒く、そのオセローが議官の美しい娘と結婚するところから始まり、二人は今後起こるどんな困難にも立ち向かえるような強い絆で結びついているように読者が感じていると・・・。
その将軍に取り立てられ、副官となった同僚を妬み、次から次へと嘘(娶ったばかりの妻がその副官と不義をしているなど)を将軍に吹き込んだ挙げ句、美しいく貞淑で高潔なその妻が夫であるオセローに絞め殺され、さらに登場人物は耳元でささやかれた虚言に惑わされ、次々と死んでいくという・・・救いようのない話です。
気がついたらほとんど皆死んでいたという、そのありさまに、一人の人間の悪意がこんなことまで引き起こすのか、と驚かされます。
シェイクスピアの作品には、演劇のあらゆる要素が入っていて、しかも人生模様の様々なパターンが盛り込まれている、といつも感じます。
たった一人の嫉妬や、虚言や、悪意による行動によって、周囲や社会は混乱し、心の中は千々に乱れるのです。
それは私達が普段生活している時にも、日々起こっていると思いました。
ニュースになるような大きな事件、悲惨な事件も、元はと言えば“ただのひとり”の心の悩みや、元は小さい恨み・妬みなどから発生していたりするのです。
演劇として、脚本としてシェイクスピアを楽しんでいると、結局そんなことにまで私達の心の中でそれは発展します。
これが文学、演劇、芸術として“豊か”なものになる大事なことだと思います。
ついでに申し上げると、私がジャズやビートルズ、宝塚をはじめとする演劇・ミュージカルに強く引きつけられるのは、単にその楽曲や、演目を楽しむだけがその喜びではなくて、上記のような魅力を感じているからなのです。
たぶん、宇宙や天体などに強く興味を持っている人、科学に強く興味を持っている人など、様々な方がいると思いますが、それはやはり単に学術的なことそのものだけでなく、たどり着くところは「人間とは何か」「なぜ我々は、そしてこの宇宙は、世界は存在しているのか」というようなことになるのでは・・と思います。
・・・だからやめられないんだよねぇ。
人間の“おもしろさ”、“はかなさ”などは、落語でも腹を抱えて笑いながら感じることも出来ます。
きょうは「オセロー」から感じたことをつらつらと書いてみました。
【NowPlaying】 トーキングウィズ松尾堂 / 浅井愼平、関根秀樹 ( NHK-FM )
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