ほんとうは、皆、後ろ向き?
『後ろ向きで歩こう/大道珠貴(だいどうたまき)著(文春文庫)』を読みました。
この方は2003年に芥川賞を、「しょっぱいドライブ」という作品で取られているのだそうですが、私は初めて作品を読みました。
きっかけは、本屋で棚に並んでいる背表紙を見て。
この本のほかにも「しょっぱいドライブ」、「裸」などが置いてありましたが、いずれもちょっとパラパラとページをめくってみると、“ゆる~い”感じ。よく言えば「レイドバック」、悪く言えば「自堕落」なストーリーが、わずかばかりのページをのぞいただけで感じ取られました。
何編かの短編が載っているのですが、どの主人公も一見「ゆるくて、面倒くさがり屋」な感じの女性。
しかも、「既婚者」か、あるいはすでに「行き遅れ」の状態で、男にはほんどなにも希望というか、期待も抱いていない人生観の女性です。
読んでいて感じたのは、小説って、いつも主人公にはある程度の「正義」や、「清潔感」、あるいは悪人であっても「筋の通った」生き方を読者は求めたりするものですが・・・まあ、この方の小説に出てくる主人公(女性)は、ほんとうに手前勝手で、人のために何かしようなどという人は出てきません。
さらに、その主人公の家族や、登場人物も自分のことばっかり考えているか、いい加減な人ばかり。
でも、読んでいると、実際の世の中の人たちって、自分を含めそんな考え方や、生き方の人ばかりじゃないかとも思いました。
なので、「ひどいなこの人」と思うことはあっても、「でも、ほんとうは自分自身もそんな生き方を日々しているかも」と思うことになるのです。
読み進むうちに共感しつつ、「何やってんだ」とも思いつつ、ページをめくる手が止まらなくなってしまうのでした。
こういう作品も気分によっては“おすすめ”かもしれないです。
本屋で見かけたらぜひ手にとってみてください。
ちょっとおもしろいですよ!
【Now Playing】 My Ideal / Ricardo Belda ( Piano Trio )
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