ジュニア向けの「財政のしくみがわかる本」
『財政のしくみがわかる本/神野直彦著(岩波ジュニア新書)』というジュニア向けの本なのですが、職場近くの本屋で目につき、それを読んでみました。
たいへんわかりやすく「財政」について初歩から書いてあるのですが、これはむしろ大人が読んだ方が良いのでは、と思いました。大人、・・そして現役の政治家にも。
特に気になったのは、所得税のウェイトが高いが社会保障負担が低く、消費課税も少ないアメリカのような国。そして、社会保障負担が低く、消費課税と所得税の高いイギリス。所得税も付加価値税も社会保障負担もいずれも高いスウェーデンのような国。それぞれがその国の社会観をあらわしていることでした。
消費税が高く、社会保障負担が高くても国民が互いに助け合っていく負担が高いことが示されていて、それはその国の考え方。国民の社会観が反映されているのだと、今までは強く感じなかったことがくっきりと頭の中に描かれてくるようでした。
国民の最低限の生活を個人所得課税のウェイトを高くしてでも所得再分配で保障するというのはひとつの考えです。
イギリスの社会保障負担は低く、互いの助け合いはあまりなくとも、人々の最低限の生活だけは個人所得課税による再分配で守っていこうというのも見識です。
日本のそれはというと、最低生活の保障をしていく責任が政府で引き受けていない、要するに個人所得課税のウェイトがかなり低い状況にあるというわけで、社会保障負担についても、フランスやドイツよりも大幅に低く、互いに国民が助け合っていこうというわけでもないようです。
消費税の増税が与党民主党でも、もぞもぞと動き出していますが、消費税が高いが、社会保障負担も高く、国民が助け合っている社会保障が充実している国とは国策は全く異なるというか、柱になる考えが見あたらないように感じます。
日本がアメリカのような「国民が自分の責任で生きていく社会」を目指すのなら、消費税よりも所得税の増税を目指すべきだし、貧しい人にも高い税負担を求めるのはますます社会の混乱を増長するように思います。
かつての、公共投資を土木建設関係などでドカンとやって、景気を浮揚させていくことができた社会だったら人はその景気のおこぼれの中で十分生活が出来、家族や、地域コミュニティなどが一定の福祉的な部分をまかない、自治体はある程度福祉関係の経費が縮減できたのでしょうが、今や誰もが働かねば生活も苦しい中で、地域のつながりも、家族のつながりも希薄になり、福祉関係の多くの部分について国・自治体がまかなわなければならなくなっています。
雇用形態もすっかり変貌し、正規職員と派遣職員という形態が常識化して、子供をつくることまでもがハードルになってしまうという変な世の中になっています。
今のままだと、富める者と、貧しい者の格差はますます開くばかりではないかと思います。
たしかに、現在では持っている人はとことん持っています。持っていない人は徹底的に持っていない。
かつての自分は中流だと思っている人ばかりだった世の中とは明らかに異なるのです。
いったいそんな国の未来をどうするのか、それをふまえた上で、国の財政の方針をはっきりとさせてもらいたいと国民として思います。
それに、今の日本というのは明らかに人の心までもが荒んでいると思います。色々な理由があるとは思いますが、ひとつはそんな実体社会と税・財政の仕組みがかみ合わないということも理由なのではないでしょうか。
前にもこのブログで書きましたが、事業仕分けなどで無駄を徹底的にはぶくのもけっこうですが、依然として未来を見据えた考え方はひとつも見せてくれないのが現在の政府です。
「必死で無駄を減らしたら何とかなると思っていたら、あれっ?そんなに減らなかった。困ったな、公約を実現するための財源さえもおぼつかない。ええい、この際消費税を上げようかな?!」というのが現状ではないのかと思いました。そのくらい底の浅さが感じられます。
国の、そして自治体の財政は、我々国民がまずどういう方向に向かえばよいのかと頭を巡らしてみることが大事なのかもしれないですね。
それが選挙結果として反映されるのですから。
きょうは、ちょっとだけ真面目に考えてみました。
お退屈さま・・・。
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