オーディオ部屋の「すごい人達」
『ぼくのオーディオ・ジコマン開陳/田中伊佐資著(株式会社ブルース・インターアクションズ)』という本を読んでいます。
オーディオに凝った(この本には“凝った”なんて、生やさしい程度の人は一人も出てこないが)人達に共通するのは、その探求心に限度というものが無くなってしまうことです。
そんな『アホ』・・この本では最高のほめ言葉・・の人たちを訪ねて行脚するという内容の本です。
だから、オーディオに何の興味もない人には、ほんとにつまらない本だと思いますけど・・でも、ここに登場する人たちは生半可ではありません。
オーディオの命の源泉は、まず電気を使うわけですから、その電源から良くしていこうと、電柱に自分の家専用のトランスを設けて、ご近所との共有による雑音を避けている人が登場。
電線も太いものを引いて、まるでその引き込み方は工場の様相です。
だいたいが、数千万もするスピーカーやアンプ、プレイヤー(アナログ、デジタルも含め)など、人生そのものをオーディオにかけている人ばかりで、スピカーケーブルを、自分で縄をなうようにして編んでいる人まで登場。
自分の求める音は永遠に見つからないのかもしれないけれど、死ぬまで追い求めようという人たちが、日本にはこんなにいるのか、と思うくらい次から次へと現れるのです。
・・・家族、特に奥さんのお気持ちは“いかばかり”かと案じました。
中には、高級真空管の一番高い奴から、不満が爆発した奥さんに叩きつけられて、割られてしまった方も登場。
でも、くじけないんですよねえ・・・。
ま、ひどい病気、不治の病の類に夫がかかった、あるいは先天性であったと、あきらめるほかないでしょう、お気の毒。
私は、オーディオにはあまりお金をかけていませんが、もちろん金があれば、この本の登場人物とまではいかなくとも、使ってみたいアンプ、スピーカーなどが存在します。
男には、誰でも(現状では40代以上くらいの人達か)そんな気持ちがあるのではないでしょうか。
学生時代は、友人の家に行くと、ステレオが部屋にあり、聞かせてもらうと、まったく自分の再生装置とは異なる音がして、「へえ、このレコードをこんな音で聞いているのか、ということは、アルバム自体の印象も変わってしまうくらい、オーディオってのは大事だぞ」と思ったものです。
それは今も変わらず、オーディオの売場に行くと、高級機器のあるリスニングルームで聞き覚えのあるアルバムなどをかけてもらいます。
「ああ、このアルバムにはこんな躍動間が隠されていたのか」とか、「間合いのときの一瞬の空気まで感じる」と思うこともあります。
そんな気持ちの、もっともっと強いものをお持ちの方々がこの本に登場しているのでしょうね。
400ページもある本ですが、驚いたり、笑ったり、あきれたりしている間に読み終わってしまいます。
人間の、そして男の“業”の深さにため息をつくことになるでしょう。
「男の自己満足」にとことんふれてみたい方(そんなのいるか?)、おすすめの一冊ですよ。
オーディオバカ一代、とくとごらんあれ!
【Now Playing】 あなたのもとへ / 沖仁 ( Healing Music )
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