小さい頃の「味」・・・
『江戸の味を食べたくなって/池波正太郎著(新潮文庫)』を読みました。
文庫オリジナルです。
特に目を引いたのは、池波さんが小さい頃から小学校を卒業して勤めに出て、色々な食べ物に出会うまでを書いた「第一部 味の歳時記」でした。
小さい頃に、橙(だいだい)を正月の飾り餅に乗せ、正月十一日にお供えの餅をこわし、汁粉にするとき、橙の汁をわんに搾り、たっぷりと砂糖を加え、熱湯をさして、「風邪を引かぬようにおあがり」と祖母がさしだしてくれる話。
勤めてからよくしてくれた方の家に遊びに行くと、「小鍋だて」といって、長火鉢に底の浅い小さな土鍋がかかり、浅蜊(あさり)のむき身と白菜を煮ながら飲んでいる、その風情が“粋”で、ざっと煮ては小皿に取り、柚子(ゆず)をかけて食べる様子を読んでいるだけで、小腹が空いてまいりました。
駄菓子屋で餡こ玉(あんこだま)を買ってきて、三銭の氷水の中へ入れ、かきまぜて食べると、たちまち近所の子たちが真似をした話。
冷蔵庫などもない時代に、山盛りのかき氷を皿に切ったトマトの上へ乗せておいて、氷水を飲んでしまってから食べる“冷えたトマトのおいしさ”などの部分には想像しているだけで、「さぞおいしかったろう」と思いました。
万事がこんな感じで書かれているので、続々と出てくる秋刀魚の話や、湯豆腐の話など、読んでいるだけで、想像・・妄想が広がり、何ともいえない気分になってきます。
私もそんな小さい頃のエピソードをひとつ思いだしました。
小さい頃、表の道路を渡ったところに何でも売っているような夫婦でやっている小さな店があり(それこそ、食材から夏にはかき氷まで)、食パンを一枚買い、いくらか払うと、バターやジャムをおばさんがぬってくれて、それのおいしかったこと・・。
こづかいをもらうと、よくその食パンを食べたものでした。
たしか、ぶどうパンや、チョコ・コロネもあった。
今食べると、なんということもない味なのかもしれませんが、あの頃は・・格別でした。
どうでしょう、ごらんのみなさんにも、そんな小さい頃の“おいしい想い出”ありませんか?
【NowPlaying】 イヨマンテの夜 / 伊藤久男 ( 歌謡曲 )
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