『阪急電車』を読んで
『阪急電車/有川浩著(幻冬舎)』を電車の中で読みました。
阪急電車の今津線の車中とその沿線を舞台に、乗り込んで来た人たちの物語が進んでいくのです。
しかも、バトン・リレーをするようにひとつのエピソードが始まるとそこには、別のカップルやおばあちゃんと孫の物語がすでに始まっていて、さらにそれがループするように最初に登場してきた人たちとも絡み、ひとつひとつが素敵な物語の連鎖になっているのです。
いやぁ、こんな楽しくてくるくると展開していく(しかも別の物語が次々とリレーされ、さらに元の物語と繋がっていったりとめまぐるしくもうれしいような)小説は初めてです。
短編小説のような長編小説のような、今までにないタイプの小説でした。
何よりもいいのは、いくつもある短編のようなストーリーが、どれも心に温かみを感じさせる、じわじわと涌き上がってくるような人としての喜びに満ちていることです。
私が今まで存じ上げなかっただけで、この小説はかなり売れているのでしょうが(こんなに面白くて売れていないはずがないもの)、つまらないページは1ページもなく、あっと言う間に今津線ならぬ京葉線内で読み終えました。
そうそうあまりに面白いので職場の女子に携帯で教えたら、もうとっくに知っていて、来年映画化・上映も決定しているのだと教えてもらいました。
これも見に行きたいなあ。
作者の目のつけどころが「阪急電車」であり「今津線」というのが、といもいいとも思いました。
私も宝塚にかつてよく行っていたときに、わざわざ阪急電車を使っていましたが、やはり阪急電車とその沿線というのは独特の雰囲気をもっています。
しかも、その観察眼がただものではないと感じました。
作者の見事な観察力と、人生への関わり方、そして小さな恋愛の芽生え方などは、思わず「もう一度あの若い頃に戻りたい」と思わせるようなものでした。
またまた、おすすめな本だなあと思いつつ朝のカフェでこれを書いているところです。
【Now Playing】 You Gotta Be / Des'ree ( Pops )
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はっPさんなら同じ作家さんの三匹のおっさんなんか気に入るかな、と思います。
阪急電車まだ読んでなかったので、みてみよう。
っと、けっして、「そうそうあまりに面白いので職場の
女子に」のくだりに反応しているわけではないので・・・
投稿: 筋肉小僧 | 2010/08/28 00:34
はっPさん、こんにちは。
阪急今津線ですか・・結構身近です。(^^)
息子が中学の頃、阪神電車で通学していましたが、今津は最寄りでした。高校は阪急で、夙川駅で乗り換えていました。この本、注文してみますね。(^^)
投稿: ymama | 2010/08/28 11:46
筋肉小僧さん、コメントありがとう。
「三匹のおっさん」の本、探してみます。
いきなりおもしろそう!
職場の女子にも・・高ポイントで伝えておこう。
遊びに来てね(^^)
投稿: はっP | 2010/08/28 15:03
ymamaさん、“どんピシャ”の沿線話だったんですね。
より身近な電車の中でのお話、私よりも深く楽しめると思います。
・・ちょっとうらやましいです。
この本、年がいもなく私、“キュン”となりました(^^;)
投稿: はっP | 2010/08/28 15:07