「はじめて愛した」をはじめて見た
宝塚歌劇団・雪組東京特別公演「はじめて愛した」を日本青年館で先週見て来ました。
この公演は、雪組男役トップスター「水夏希(みずなつき)」さんの退団を受けて、「音月桂(おとづきけい)」さんがトップに就任し、初めての東京での公演となります。
ただ、一般的な「正式お披露目」は、本場大劇場と東京宝塚劇場での組全員が揃っての公演となりますので、試走的なものと言えるものです。
物語は、雪組トップ、水夏希さんの退団公演と同じく、「正塚晴彦」先生です。
しかも、同じ“殺し屋もの”。
東京宝塚劇場での水さんの公演は、このブログにも書きましたが、説得力の無いストーリーと、一本調子で舞台上の登場人物が少ない、納得のいかないものでした。
で、またも正塚先生で、さらに殺し屋登場のストーリーときては、「期待できない」と思うのもいたしかたないと思って劇場に向かいました。
夜の部でしたが、そんなことも反映してか、上手側の一階後部座席は、後ろから9列目まで“ガラガラ”でした。
これは、新トップのお披露目としては、かなり寂しい感じです。しかもトップ娘役が不在という状況。
劇団側の考え方がよくわかりませんが、月組の瀬奈さんのラスト間際の娘役トップ不在がいかにもの足りないものだったかというのは、反省材料になっていないようです。
逆に言うと、今回娘役の主役を演じた「愛加あゆ」さんも熱演しているだけに気の毒な感じがしました。
さて、「はじめて愛した」の感想ですが、同じ正塚先生の「ロジェ」よりは、ずっといいと思いました。
ストーリーにも意外な展開があったり、役それぞれに“色”が付きました。
また、今回は「コロス」といって、舞台後方階段状のセットで実際に前方で演じられている人達の『心象』が“影”のようになって、複数の人の動作で表現されているという、宝塚ではほとんど見たことのない表現方法が用いられていました。
これは、とても興味深く思いましたし、非常に効果的であったと思います。
常にチャレンジングな宝塚ならではの試みだと思いました。
照明についても、ステージ上に何本かの光がピンスポット的に真下に降るようなライティングがあったりして、いつもの宝塚の照明とは異なる印象がありました。
これも目を引きました。
で、音月さんは合格点であったと思います。
宝塚の男役トップとしては、若々しい印象のきりっとした姿が群を抜いていますし、たたずまいも美しい。
まだまだ二番手的な雰囲気が漂っているのですが、それはおいおい大劇場公演で解消するでしょう。
今回二番手に該当する早霧せいなさんは、演技力も表現力も以前にも増して良くなられた感じで、舞台上でも映えていました。
お客さんを“つかんで”いたように思いました。
逆に、沙央くらまさんは、ちょっと配役が気の毒な感じで、大きく目立つようなところがあまりなく、実力があるのにもったいない・・と思いました。
ただ、その中でもさすが実力者で、お客さんの目をぐっと引きつける箇所は何箇所かありましたけど。
愛加あゆさんは、今回の娘役主演に抜擢されたわけですが、大きく目立つようなところはありませんでしたが、可憐に、優しく演じられて、「不安」と「疑心」と「哀しみ」と「希望」「喜び」など、巧みに演じていました。
この年代の方としては、なかなかの娘役さんだと思いました。何よりも愛らしいのがいいです。
今回特に目立ったのは、凛城きらさん。
主役の音月さんを助けるような役回りなのですが、ご本人の人柄も手伝ってか、観客を笑いに誘い込んだり、我を忘れて音月さんのために尽くすシーン、さらに舞台上の雰囲気・たたずまい、などを見ていて、何か宝塚の男役に必要なエッセンスを持っている人だと、強く感じました。
もう一人、これはすごい!と思ったのが彩風咲奈さん。
主演娘役の愛加さんを苦しめる男を演じたのですが、悪いけれど、自分の好きな女性への思いを少年のようにぶつけ、しかも周囲には残虐だったりする役を巧みに演じていました。
立ち姿も非常に映えました。一押しです!
さらに娘役で一人、特筆したいのが、娘役で研一(ようするに一年生)の夢華あみさんです。
これから予定されている大劇場の「ロミオとジュリエット」では異例の大抜擢、主演も予定されているのですが、それもうなずけるような印象を持ちました。
今回も主演の音月さんを支える未沙のえるさんに育てられ、クラブの歌手を表の姿に、裏では未沙さんの仕事を裏方で支える役でした。
まだまだ“舞台なれ”していなくて、時々所作に「スキ」も感じたのですが、それを補って余りある雰囲気を持っているのは間違いないと思いました。
男役二人を両脇に従えてのソロでの歌唱も堂々としたものでした。
演技も通常の娘役に紛れてしまわない、独特のオーラのようなものを早くも出していました。
ちょっと気になったのは、自分の出番になったときに、顎を前に出してしまうクセがあるように思いました。
ラストに全員が舞台上に揃ったときには、上手の袖で、グッと顎を引いていて、その方が美しく、キリッとして見えると思ったので・・・。
今回の雪組、音月さんのトップ最初の公演は、“ギャングもの”的な演目で、あまり宝塚的でないことを差し引いて、そしてトップ娘役不在ということも差し引けば、及第点であったと思いました。
次の大劇場公演には、大いに期待したいと思います。
それに、トップ娘役の早い就任を待望しています。
【NowPlaying】 歌の日曜散歩 / 鎌田・坪郷アナ ( NHK-AMラジオ )
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