向日葵の咲かない夏
『向日葵の咲かない夏/道尾秀介著(新潮文庫)』を読みました。
夏休みを迎える終業式の日に、主人公の少年が先生に頼まれて欠席した級友の家に届け物をするところから、この話は始まります。
友達の家に行くと・・・友達は首吊り自殺をしている・・・。
しかも、その後瞬間的にその遺体は無くなってしまう。
恐ろしい展開から始まりますが、こんな衝撃的な出だしが、実はまだまだ衝撃的でなかったことになります。
それほどこの物語のストーリー展開は予測のつかないものでした。
登場人物にしてからが、この人は“いい人”なのか、と思うとそうでなく、結局のところ誰も“いい人”などいないのです。
ミステリーとして読んでいると、ホラー的になり、ホラーかと思っていると、空想的になり、登場人物の視点で見ているものと、読者が見ている視点が異なっていることにも気づき始め、ストーリーの先は気になるが、怖ろしくて先に行きたくないという気持ちも涌いてきて、「もう、どうにでもしてくれ」と叫びたくなるような、不思議で風変わりな物語です。
読んでいて「何処かでこれに似たものを読みながら感じたことがある」と、思い出そうとしていると、・・・思い出しました。京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」でした。
ホラーでもあり、ミステリーでもあり、ファンタジーでもある、・・そんな感じです。
途中で投げ出したくなるくらい、気分が悪くなった部分もありましたが、しかし、先が気になる・・のです。
ラストに近づくに連れ、登場人物の誰にも共感できなくなり、荒涼とした世界観が広がってくるようでした。
それに、きっと、この世界を理解しようとする人と、そうでない人に大きく分かれるような作品なので、私も“おすすめ”する気にはなれません。
ベストセラー作家で直木賞作家の著者ですが、好みは大きく分かれると思います。
私は、もう一度この人の他の作品を読みたいか、と問われれば、「もう読まない」・・・です。
【NowPlaying】 I'm Glad There Is You / Steve Kuhn Trio ( Jazz )
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