ふがいない私は、これを読んだ
『ふがいない僕は空を見た/窪美澄(くぼ・みすみ)著(新潮社)』を読みました。
山本周五郎賞、本の雑誌選出・2010年度ベスト1、2011年本屋大賞第2位、第8回女による女のためのR-18文学賞大賞、など受賞多数、書評などでも絶賛されていて気になる本だったのです。
収められている五編の短編小説は、すべてが繋がっていて、さっきまでわき役として登場していた人物が主役となり動きだします。
前の話では、読んでいて「ただ、変な人」と思っている人が次ぎのお話では、まるで読んでいる私の事のように生活し、苦しみ、悩み、さまざまな出来事、人間関係のまっただ中に、いきなり川の深みにはまったように飲み込まれていく、そんな感覚を持ちました。
五編すべての登場人物が、今この世の中にいる人をリアルに描いているような、そんな気がしました。
つまり、人みな全て悩みの淵にいて、苦しんでいる・・というのがこの作品群から伝わってきたことでした。
人は、それぞれ自らが苦しんでいるのにもかかわらず、他人に対しては平気でひどいことをする。
どうしていいかわからないが、苦しみにも悩みにも解決がないままに生きていく。
そして、その人生の流れは他人に翻弄され、思うようにはいかず、多くは悪い方へと流れていく。
最後まで読んでも、明るい方向はほとんど見られず、今までの悩みは相変わらず引きずられている。
・・でも、私たちの生きている現在は、実際そういうものです。
はっきりと解決することなく、悩み、その他もろもろの人生問題は、ただ時とともに流れていきます。
傍観する者、流れに身をまかせる者、流れから脱出しようとする者。・・さまざまです。
そんなことを書いた本なのかな、と思いました。
ただ軽く読んでしまおうと思っても立ち止まらせてしまうような、そんな本でした。
【Now Playing】 ニュース / NHK ( AMラジオ )
« facebookやTwitterでの投稿などについての疑問 | トップページ | プチ“天使”情報 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
コメント