『鼓笛隊の襲来/三崎亜記著』を読みました
『鼓笛隊の襲来/三崎亜記著(集英社文庫)』を読みました。
短編集なのですが、不思議な話ばかり。
著者は、映画にもなった「となり町戦争」を書いた人ですが、あれと同じくらいまったく想像もつかないような話がいくつも収められています。
赤道上に発生した“鼓笛隊”が勢力を強め日本列島に上陸する話。
沿岸で迎え撃つオーケストラ・・・その世界に身を置きつつ読み進められるようになればこっちのものですが、訳が分からず怒り出す人もいるかもしれないですね。
一番印象に残ったのは「覆面社員」。
法律で覆面をして仕事をすることが認められ、覆面を被った場合は別の人格として仕事をして、生活もできるようになり、仕事や人間関係で疲れた人々のある意味ひとつの解決手段にもなっている社会を描いていました。
読んでいて、私も覆面をして仕事に出かけ、今の自分とはまったく別の人格になり、生きてみたい・・などと、ふと思いました。
このストーリーの中でも描かれているのですが、覆面を被っている人たちは、その覆面生活がやがて日常になってしまい、覆面をした別人格の中でもまた悩みが発生していくのです。
つまりは、悩み、病む人間は無間地獄の只中にいるのだということが書かれていたのではないかと・・・。
その他、展覧会をのぞいたら、忘れていた異性と過ごした過去の自分の痕跡が展示されている展覧会の話など、ふと紛れ込んだ不条理の世界が次から次へと書かれています。
見慣れた、当たり前だと思っていることが実はチャンネルが変わると全くの別世界になる・・そんな作者の“奇想”が縦横無尽に収められている本でした。
『傑作』だと思いました。
【NowPlaying】 夜と朝のあいだに / ピーター ( 歌謡曲 )
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