『県庁おもてなし課』を読んだ
『県庁おもてなし課/有川浩著(角川書店)』を読みました。
これは、著者、有川さんのお父さんが、昔、高知県が動物園を新設する際に、「高知にパンダ誘致」論を“ぶった”ときのことを覚えていて(高知のオヤジは皆、そういうことを声を大にして言うのが好きみたいです・・)、それをどんどん発展させて、この本でパンダ誘致を唱え、お役所の反発を受けた上に閑職に置かれて役所をやめてしまうという登場人物の中心にいる人に仕立ててしまい、この小説を作るきっかけになっているのです。
巻末にある「参考文献」を見ると、役所の仕事の進め方や、行政の仕組みなどについてもずいぶんと熱心に調べているようで、ストーリー中にある遅々として進まない役所側の仕事、そして公平性を求めるあまり、できあがったものが何の魅力もない、手に取りたくもないPR紙になってしまったりという・・笑えない展開が非常にリアルに、見てきたように(見ているとしか思えない)書かれているのです。
象徴的な出来事としては、「おもてなし課」という名称の部署を持つ高知県の職員から「高知県の観光特使となってください」と言われ、有川さんは承諾。
でも、全然その後は音沙汰なし。
メールで「何をしてほしいのか」と聞くと、会った人に肩書き入りの名刺を配ってほしい」とのこと。
でも、名刺は印刷どころかデザインもしていない状態であったとのこと。
このエピソードはそのままこの小説の冒頭に使われ、“打てど響かず”の主人公「掛水」が、やがてズンズン観光について積極果敢に仕事を進める“カッコイイ”掛水君に変身していく展開となります。
さらに、最初、主人公にあきれかえる観光特使を頼まれた作家は性別こそ違え、有川さんそのもの。
この作家「吉門」と県庁職員「掛水」、さらに有川さんのお父さんがモデルとなった県庁を辞めさせられた「清遠」の主要三キャラクターと、掛川、吉門の身近にいるキャラの立った女性二人のラブストーリーも絡み、面白い小説になっています。
ストーリー的にも楽しめる小説ですが、私の職業柄、随所に出てくる“役所”の冒しがちな事例がドキッとさせてくれるのです。
しかも、あなどれない・・参考になるのです。
参考になるということは、自分がダメダメだということで、面目ない・・・。
有川さんの小説は何を読んでもおもしろいのですが、これもそうでした。
この小説の中心である観光的なエピソードで気になったのは、小説中でも主人公「掛水」と「明神」のカップルが訪れる「馬路村」でした。
不便なこと、不備なことも含めて魅力のひとつに取り入れていく村全体での取り組みは、その部分を読んでいるだけでもワクワクしてくるのです。
そんなこともこの小説を読む楽しみのひとつになっています。お時間があればぜひ読んでみて!
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