「タイニー・タイニー・ハッピー」で少し幸せ気分
『タイニー・タイニー・ハッピー/飛鳥井千砂著(角川文庫)』を読みました。
タイトルの「タイニー・・・」は、この小説に出てくるショッピングモールの名前です。
そこで働いている男女何組かが次々と短編で登場し、男女のドラマを繰り広げるのですが、でもそのドラマはとっても身近で、きっとどこにでも、どのカップルにもある小さくて大きな悩みを内包しています。
この小説を読んでいて感心したのは、ささいなことだけれど、夫婦や恋人達の間では、微妙なニュアンスを含む問題が長く二人の間に横たわっていることが多々あるということ。
それが巧みに描かれているのです。
しかも、化粧品などの小物を使って、やがてそれが話の筋に効果的に使われてきて、作者の憎いテクニックに思わず「なるほど」とうなったりもしました。
相手に対する考え方、気持ちの持ち方が、ほんの小さなエピソードによって、微風が吹くように心地よく変化していくシーンが有り、読んでいてほんの少し幸せ気分を感じました。
一般的な恋愛小説などでは、劇的な出来事があってストーリーが展開していくことが多いのですが、この小説では他愛もないことから、そして誰にでも起こりうることから物語が進行するのです。
それが非常に身近で、心の中に沁みてくるのです。
何気ない日常の中に、悩み、愛、感動が存在している・・それを再認識させてくれる物語でした。
女性におすすめですが、男が読んでもかなり心動かされる小説です。
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