江戸風土記「小さな花がひらいた」見てきました
宝塚歌劇・花組全国ツアー市川公演「江戸風土記・小さな花がひらいた(山本周五郎作・ちいさこべより)/ル・ポァゾン -愛の媚薬- 」を昨日(15日)、初日の回を見てきました。
小さな花が・・は、初演が1971年で、その後再演を繰り返してきた演目です。
前回の東京公演で新トップ蘭寿とむ(らんじゅ・とむ)さんと蘭乃はな(らんの・はな)さんのファントムを見たわけですが、今回は完全に和モノ!
うわさには聞いていましたが、頑固一徹の大工の若棟梁(蘭寿さん)が、大火で親も失い、全てを失ってから、さらに度重なる災禍に見舞われるも、それに屈せずに雄々しく生きて行く・・・さらに大火で焼け出された子供達の面倒を見る娘(蘭乃さん)も引き受け、14人の子供たちと必死に生きて行くお話です。
もう、舞台を見ていると昭和30年代頃の白黒テレビでドラマを見ているような感じ・・・。
これを今まで宝塚でやったことがあった、というだけで驚きでした。
目立った格闘シーンなどというものも無く、真摯に生きていく若棟梁「茂次」と下で働く大工達と子供達の両方の面倒を見る健気(けなげ)な娘「おりつ」の姿を真面目に演じていく舞台。
果たして、これを今の若い人達が理解できるのだろうか・・と思いました。
私がかつて聞いた1981年のバージョンでは、ちょっとおくれたような娘「あっちゃん」を演じた星組の葦川牧さん(可愛くて美しい、そして幸薄そうな消え入りそうな娘役さんでした)が好演したらしいのですが、今回は月野姫花(つきの・ひめか)さんが、やはりがんばっていました。良かったと思います。
また「くろ」という蘭寿さんのもとで働く大工を演じた華形ひかる(はながた・ひかる)さんは、この物語に人情とうるおいを与えてくれる貴重な役を見事にこなしていました。
はっきり言って今回の華形さんなくしては、この「小さな・・」は成り立たなかったと言ってもいいくらいの好演でした。さすがです。
また、「おゆう」というお大尽の娘を上品に演じた花野じゅりあ(はなの・じゅりあ)さんも久々に正当派娘役的な「役」を優雅に、美しく演じて、モノクロ的な舞台に色彩を添えてくれました。
専科の京三沙(きょう・みさ)さんは、舞台をきっちり締めてくれて、この物語を一本筋の通ったものにしてくれました。
で、主役の二人ですが、蘭寿さんは元々こういう好人物を演ずると、本来の人柄も生きて、とても良いわけで、頑ななまでの誠実な「茂次」をうまく演じていました。
ただ、演出の問題かと思いますが、あんなに苦労しているのにずいぶんと茂次は身なりが良すぎるのでは・・とも思い、やつれた感じもなく、それが出ていればよけいに涙を誘ったのかも、と思ったのです。
蘭乃さんの「おりつ」は、健気な真っ直ぐの女性、そして淡い恋心を茂次に感じている役なのですが、まさにぴったりの役どころです。
今、こういう役をやらせたら、娘役トップでは一番ではないでしょうか。
和装もとても似合っていて、とても良かった。ただ、この役についても、あまりに身なりが良すぎやしないかと思いました。ちょっと気になったんですけどね。
「小さな・・」は、年代やその他条件によって、ぐっと来ない人もいるかもしれませんが、私にとっては心に残るものがありました。
そして、ショー「ル・ポァゾン」です。
こちらは、1990年、剣幸さんの月組が演じたものの再演です。
実は、当時私はこの演目を見ているのですが、なにせ昔のこと。ほとんど記憶がありません。
なので、ほぼ初めて見る感じで新鮮な鑑賞でした。
こちらでも、華形さん、花野さん、望海風斗(のぞみ・ふうと)さんの活躍で、魅惑的な舞台となっていました。
蘭寿さん、蘭乃さんのトップコンビにとっても、初めてのショーでの絡みです。
デュエットダンスも楽しみにしていたわけで、やはりこの二人が並ぶと絵になります!
昔の演目なので、今のスピーディーな展開のショーと異なり、ややゆったりとしていたのですが、馴れればこれも優雅で良いものです。
フィナーレでは、華形さんはこの公演では二番手の扱いなのに、「羽根」を背負っていませんでした。
ちょっと、さびしかったなぁ。華形さんは今や堂々とした組を支える男役です。
羽根を背負って現れても良いのではないでしょうか。
今回は、全国ツアー初日で、市川市文化会館での公演でしたが、気になったのは、一階は満員だったようですけど、二階はかなりの空席が目立ちました。
蘭寿さんがトップに成り立てのホットな花組初の全国ツアーとしては、初日なのに・・これもちょっと残念でした。
全体に、今回の演目はどちらも回を重ねる毎に良くなるような性質のものなので、できればまた見たいという感想を持ちました。・・ちょっとそれは無理かもしれないですけどね。
以上、花組全国ツアー初日の報告でした。
【NowPlaying】 目黒のさんま / 入船亭扇辰 ( 落語 )
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コメント
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hanihaniさん、コメントありがとうございます。
いちいちうなずきながら興味深く読みました。
若棟梁の身なりや蘭ちゃんの身なりなどにも、そうかな・・と80%の納得(*^^*)をいたしました。
あと、今日、職場の宝塚ファンの女神とちょっと話したのですが、初めは駄目だと言っていた子供達を引き受けることになったときの気持ちの表現する場が無かった・・ちょっと有ったが・・あっさりし過ぎていたように感じたということで、私も同感でした。
はっきり言うと私は「らんとむ」ファンなので、期待が過剰なのかもしれませんが・・。
あとは、おゆうさんとの結婚のことに蘭ちゃんがふれたときに、らんとむさんが平手打ちをしたときに、私も女神もちょっと違和感を感じたのです。
そうまでしなくても・・と思ったのですが、まあそのときの私達の気持ちや、その日の舞台の状況によっていろいろとそういう見たときの感触って変わるので何とも言えないのですけど。
というわけで、私もいつもに増して本気で見ているってことで、色々と過敏に感じるのかもしれないです。
しかし、hanihaniさんのようにコメントいただいたような内容を明確におっしゃっていただけると、とても参考になります。それにうれしいです'(*゚▽゚*)'
これからも、私の拙い観劇後の感想にコメントください。
次は・・雪組ですかねo(*゚▽゚*)o
投稿: はっP | 2011/10/24 21:34
>>ただ、演出の問題かと思いますが、あんなに苦労しているのにずいぶんと茂次は身なりが良すぎるのでは・・とも思い、やつれた感じもなく
それは宝塚だし・・・というのは簡単なので、勝手に考えてみました。
先ず茂二さんですが、江戸の大火事のときには川越に出仕事で行ってたので、着替えの着物とかは何着か川越に持参していたはず。
若棟梁として川越ではお客様のお座敷に出たり、大工仲間への挨拶もあったとすると、
仕事着だけではなくて職人のクロちゃん達よりはきちんとした着物を持参していたはず。
ということで、ちゃんとした着物が残っている。
あと、福田屋へ行くときなども大留の看板を背負っていくわけですから、一張羅を着て借金にいったと思う。
それに一家の棟梁が汚い格好ではそのうちの台所が知れるってもんで、嘘でも小奇麗な格好で借金させてくれ!と言いに行ったと思います。
江戸っ子は見栄っ張りだったしね、どうでしょうか?
蘭ちゃんはあれなら木綿ものだし貧しい娘としては良かったんじゃないかと思います。
おゆうさんたちはちゃんと絹物の振袖を着て差をつけているし。
あと、宝塚だからそこそこのラインで止めておく必要もあるかなぁと感じます。
焼け出されても健気に頑張るということを表現するのには、汚い着物、つぎはぎだらけの着物じゃなくても
十分心意気は伝わります。
そこが新劇とかとは一線を画するところかもね
投稿: hanihani | 2011/10/24 13:43