とける、とろける・・を読んだ
『とける、とろける/唯川恵著(新潮文庫)』を読みました。
私がたまたま選んでいるのか、それともそういう傾向が今現在あるのか、「性愛」についての小説がとても目に入る・・飛び込んでくる、ような気がします。
このブログでもそういう小説を何冊かご紹介いたしましたが、どれもひと昔、ふた昔前には考えられないくらいの大胆な内容です。
この「とける、とろける」にしても、いくつかの短編で構成されているのですが、もう想像も及ばないくらいの“突き抜けた”行為、そして登場人物が“そのとき”に感じている感覚が、なにかドラッグでもやっているかのように見たこともない色彩感覚で描かれています。
それも、この作者は女性で50代ですが、今の若い人には及びもつかない激烈・苛烈な感覚であり、描き方です。
これを今の冷め切った若者が読んだらどうなるのだろう・・と読んでいる最中に思いました。
よく、30代くらいの独身の男女の方とお話をすると、異性と付き合うのが「面倒くさい」という発言をもらいます。
自分の生活リズムが乱れる、とか、恋愛の進行が思うようにならない、などとも言っていました。
リズムがくずれるほどの恋愛、思うがままにならない相手、・・それが恋愛だと思うのですが、自分の思い通りの恋愛と、人生の軌道が出来ていて、そうならないとイヤなのかもしれないですね。
つまり・・・全く面白くない恋愛だね、そりゃ。・・恋愛じゃないかもしれない。
この小説では、何不自由なく人からも羨まれる生活をしている主婦が実は・・、とか、30代半ばのもう恋愛も結婚もあきらめているらしいと会社の同僚や周囲の人なども思っている地味なOLが考えもつかない大胆なことをしている、あるいは妄想している、というお話が続きます。
人は、日々平穏に暮らしているようで、その実内面に隠されている性愛への熱情は・・というテーマなわけですが、今や社会の実態はそうでもなくなっているのかもしれません。
「愛」は、小説でも音楽でも舞台でも、一番よく登場するテーマです。
やがてそれは人間のテーマではなくなってくる社会がくるのか・・とふと思ったりもした読後でした。
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