「乳房/伊集院静」を読んだ
『乳房/伊集院静著(文春文庫)』を読みました。
第12回・吉川英治文学新人賞を受賞した短編集ですが、どの話も珠玉の逸品でした。
読み進むと、過去に野球をやっていたエピソードや、イベントの演出をしている登場人物が出て来て、「これは伊集院静さん本人の経験が描かれているな」とすぐに感じたのですが、どの話も深く、しみじみとしていて、哀しい・・・。
別れた妻との間に出来た子が高校生になり、赤ちゃんのとき以来に出会うシーンなどは、登場人物であり、伊集院さんでもある男がオシャレな店で待っていて、その「どうしたらいいんだろう」という気持ちが・・読んでいる私までドギマギさせられたのでした。
どの話も、ドギマギします。
これはなんだろう、と思いましたが、「男」が皆、心の奥深くにしまっているものに触れているのではないか・・などとも感じました。
なので、深くしみじみと心に沁みてくるエピソードばかりです。
思い病気になった妻に付き添い、その姿を見た友人が「善人になり過ぎてやしないか、それが奥さんにわかってしまうぞ」と言われ、自分についてあらためて考えるシーンや、「私がこんなだから、いろいろと我慢できないのなら外で“遊んできて”いいんだよ」という妻の姿に、夏目雅子さんの闘病の姿が目に浮かんだりもしました。
どの話もエンディングらしいエンディングもなく、解決することもなく、ただ人がいろいろなものを背負って生きて行く姿がそのまま淡々と描かれていて、それが逆に心に響くのです。
いい短編集でした。
次は、今売れている「大人の流儀」も読んでみようかと・・・。
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