『近松・恋の道行』・・感動の中で【2/2】
前回の続きです。
宝塚歌劇・花組東京特別公演 上方絵草紙「近松・恋の道行」、今度は花組の皆さんの活躍についてです。
先ずは主演男役の愛音羽麗(あいね・はれい)さん。
彼女独特の“女性っぽい”というか色気のある男役は、今回の心中ものにはとても“合う”感じがいたしました。
真面目で世間知らずの茶碗屋「一つ屋」の跡取り息子を演じ、新伏見坂町「柏屋」の見世女郎の「さが」(役:実咲凛音 みさき・りおん)に出会い、初めて男女の機微にふれます。
「さが」に入れあげ、幼馴染みの悪に騙され、それでも信じることをやめず、破滅・・心中へといざなわれてしまう、はかない人生を演じて見事でした。それに愛音さんは歌が良い。和ものにもしっくりと、そして哀しく美しく響く歌声は見事でした。
相手役の実咲凛音(みさき・りおん)さんは、今後宙組主演娘役としての組替えが決定していますが、さすがの色気と、凛とした美しさに見惚れました。
それに、台詞の軽やかさと、通りの良さもキンキンせず、優しく観客の耳に届きます。早くも素敵な主演娘役の予感がいたします。
“うまい話”で主役の愛音さんを騙し、地獄の底まで突き落とすイヤな役(印伝屋長作)を演じた瀬戸かずや(せと・かずや)さんも良かった。思わず芝居を忘れて「なんてことするんだ」(^o^;)と、やきもきしてしまいました。
私の大好きな宙組男前軍団から組替えでやってきた近松の次男で浄瑠璃作者を目指すも目が出ず、放蕩息子を演じた春風弥里(はるかぜ・みさと)さんも大熱演!体当たりでこの物語の肝心な骨の部分に関わり、大役を見事に果たしていました。
ベテランの汝鳥伶(なとり・れい)さん、光あけみ(こう・あけみ)さん、そして専科に移った夏美よう(なつみ・よう)さんは、この近松ものに一本芯を通して重厚な演技を見せてくれました。
とても良かったのは、小間物行商人だが、実は赤穂浪士の一人に仕えた足軽の息子で、女郎に身を落とす運命になってしまった主人の娘を命がけで守ろうとする清吉を演じた華形ひかる(はながた・ひかる)さんでした。
その女郎に身を落とした娘・小弁を演じた桜咲彩花(おうさき・あやか)さんとともに、二人の淡くて必死な愛の姿と主演二人の狂おしいほどの情念の愛が舞台で交錯して、それはそれは日本的な男と女の世界がひろがって、宝塚ではなかなか無いものになっていました。
来て良かったと思いました。
ちょっと驚いたのは、浄瑠璃そのままに人形として踊っていた柚香光(ゆずか・れい)さん。
とても美しい男役で、誰だろう誰だろうと幕間までその立ち姿が頭から離れなくなりました。きりっとしたいい男役です。2009年初舞台ですから、まだまだ若手です。注目ですね。
皆さんが皆さん、その時代に生きていた人たちのように、生き生きとして立ち振る舞い、踊りも歌も、もちろん芝居も、まったく隙のない良い舞台でした。
本公演も含め、今年前半で一番の良い舞台だと正直思いました。
見なかった人は、・・ちょっと損したかも・・φ(・_・;)
【NowPlaying】 アメリカのあくび指南 / 鈴々舎馬るこ ( 落語 )
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