気になっていた『大人の流儀』を読んだ
書店に行くと、平積みで見かけることの多かった『大人の流儀/伊集院静著(講談社)』を読んでみました。
気になるんだけど、なかなか手が伸びなかったこの本、読み出したら“叱られっ放し”のような気分になるかと二の足を踏んでいたのです。
でも、読み出したら面白い本です。
あの歌舞伎役者の喧嘩の件についても書かれていますが、家人が野次馬的に色めき立っても、「喧嘩両成敗」のひと言で片付け、ワイワイと騒いでいる中に入っていったりはしません。
「大人だなぁ」と思う著者の考え方がたくさん記されています。
四国まで見舞いに行き、東京に帰ってきた足でそのまま一見の客で湯島の鮨屋に入る話も大人のものでした。
店主との静かなやりとりと、「ぽつぽつ握ってくれますか」と一人酒する様子。
一人前の握りでビール二本、日本酒三本をやって頃合いに勘定を頼むシーンなどは何気ないことなのに味わい深いものでした。
著者が立ち上がると、店主が素早くカウンターを出て外まで見送り、「旦那さん、旦那さんも身体に気を付けて下さいまし」という実のある言葉を聞く・・・。
書けないシーンです、私のような一般人には。
巻末に「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々~」という一文も加えられていて、これが夏目さんと知り合うところから死別するところまでが淡々とその心模様とともに描かれていて、心に染み入りました。
夏目さんの明るく、くったくのない人柄と、最後に伊集院さんに見せた涙のくだりで、ぐっときてしまいました。
味わい深く、大人で、ちょっと無頼な感じも漂わせる本でした。
読んでよかった。
続編も出ているので読みたくなりました。
【NowPlaying】 Long Long Long / The Beatles ( Rock )
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