美丘(みおか)・・石田衣良・・読みました
『美丘/石田衣良著(角川文庫)』を読みました。
以前テレビでも放映していたようですが、何せ一週間に30分もテレビを見ることがない私ゆえ、この話の内容を知りませんでした。
しかし、書店でのポップや、帯のフレーズを見ると悲しい結末であることはわかりますので、ちょっと手が出ずにいました。
古本屋で割と最近に見つけて読み始めたのですが、もう書きっぷりが最初から後々の悲劇を予感させるもので、ドキドキしながらページをめくり、先を読むのがこわくなって本を閉じてしまったりを繰り返しながら読みました。
大学生同士の恋愛物語なのですが、主人公の男が美人の彼女を振って激情の赴くままちょっと変わった過激で、我が道を行き、自らの衝動のまま突き進む女の子に走り、その子がクロイツフェルト=ヤコブ病で脳みそがスポンジのようになって死んで行く運命にあることを知る・・という・・簡単にいうとそういう話なのですが、あまりに楽しく悦楽的で情熱的、刹那的な恋愛シーンが続いたあとに恐れていた運命がやってきて、そのコントラストにこちらの胸も痛くなりました。
だんだんその病気を持つ「美丘」という名の女性が、難しい言葉がわからなくなり、やがて恋人もわからなくなっていくあたりでは涙がポタポタと落ちて困りました。
後書きには、そういう泣くという感情も超えて泣くこともできなかったというようなことが書いてありましたが、私は泣いてしまった。
いよいよ病気の初期的症状が出始めたときに、美丘が、ただ生きていること、そして周りの景色やその他全てが実はこの瞬間も素晴らしいことなのだと主人公の恋人に語るシーンでは、私も、そうなんだ生きているだけでそれが素晴らしく、そして周囲の家族や友人、あらゆる景色など、全てが素晴らしいのだと気付いたわけですが、人の性です、また明日にはそれを忘れて日々様々なことに悩んでいくことになるのでしょうが。
ちょっ怖がって手が出なかった石田さんの作品ですが、やはりいいお話でした。
しばらくは、電車の窓から見える景色が新鮮に映りました。不思議なものです。
【NowPlaying】 Love Me Do / The Beatles ( Rock )
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