渡辺淳一の「無影燈」を舞台化・・見ました
渡辺淳一の小説、『無影燈』を宝塚が舞台化しました。
タイトルは『双曲線上のカルテ』。
「無影燈」は二十年も前に古本屋で買ってきて読みました。でも、もう何も記憶にないのですが、宝塚(石田昌也版)では、舞台は日本からイタリアに変わっていました。
演ずるのは早霧せいな(さぎり・せいな)を中心とする雪組の少数精鋭部隊です。
会場は「日本青年館」。
いったいどんな作品になっているのか、興味津々でした。
主演の早霧さんは、ルックスもちょっと頬がこけて今回の自らの死に直面しながら医師という職業を続けていく役にピッタリでした、・・・役づくりのためなのか、それとも組の新トップスターが発表になり、それらの心労が重なってか、ちょっと心配しましたが。
今回の早霧さん、非常に良かった。医師としての自分のあり方を全うしていくかけがえのない姿、そして残り時間の少ない自分の人生の中で酒と女でその恐怖を紛らわす荒んだ生活、共に演じて見事でした。
また、早霧さんにはこういう役が似合うのではないかと、私、あらためて感じたのです。前回の苦悩する天才ダンサー「ニジンスキー」でも同様のことを感じました。
演技も、全体から滲み出てくる雰囲気も良かったし、歌も肩の力が抜けて心地良いものでした。
早霧さん、自然体で舞台に立つと本来の魅力が出てくるのかも、と思いました。
相手役の星乃あんり(ほしの・あんり)さんは、まだ若手ですが、娘役の花のような雰囲気を持ち、可愛くてしかも美人な方。今回の早霧さんを本当の男女の愛に目覚めさせる役には合っていたと思います。
最後まで優しく素直な看護婦を演じて合格点です。
そして、今回男役での早霧さんの相手役となった夢乃聖夏(ゆめの・せいか)さん。
星組からの組替えで、同期の早霧さんと渡り合う役柄となりました。
夢乃さんの“真っ直ぐ”な演技はこの芝居をキリッとさせてくれました。
それに、星組仕込みの「ゴージャス」な印象は今の雪組にはあまりない人材で、夢乃さんが歌うときも、芝居をしているときも、常に宝塚らしい華やかさを感じさせてくれるのです。
夢乃さん、雪組に来て一気に開花したと感じました。
驚いたのは、早霧さんの荒んだ生活の中で、その「女」として深い仲になっていた病院長の娘役の大湖せしる(だいご・せしる)さん。
娘役に転向していたのですね。
“いい女”“気性の激しい女”“実は心根の優しい女”“情の深い女”を演じて、ただの娘役ではないことを印象づけました。今回の舞台の重要な役どころをきっちりと締めてくれました。満点です。
専科からの夏美よう(なつみ・よう)さん、五峰亜希(いつみね・あき)さんは、苦悩する様子やコミカルなエピソード、人生の機微を演じて自由自在、縦横無尽です。流石でした。
若手で、過去に期待されながらロミオとジュリエットのジュリエット役を降りてしまい、どうなることかと思っていた夢華あみ(ゆめか・あみ)さんは、夏美さん演じる院長の元恋人で隠し子を育てたマダム役を頑張って演じていました。ソロで歌うシーンもありましたし、このまま素直に伸びていってほしいと願います。千葉市出身の夢華さん、がんばれ!
その夢華さんの息子を演じた彩凪翔(あやなぎ・しょう)さん、自らの数奇な運命を嘆くことなく、素直で立派な青年になり、母親の夢華さんを諭す場面など、「ああ立派になって・・」と思わず私がオバチャンになって“いい子いい子”したくなる好青年を演じてカッコ良かったぁ~*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. 素晴らしいっ!
今年見た本公演を含めた宝塚の舞台でもなかなかどうして素晴らしい内容でした『双曲線上のカルテ』。
雪組も充実してきましたねぇ。このあと本公演が楽しみになってきました。
そう言えば次はあの『仁』の舞台化です。ますます楽しみ'(*゚▽゚*)'
【NowPlaying】 Martha My Dear / The Beatles ( Rock )
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