ジャン・ルイ・ファージョン-王妃の調香師-見て来ました
東京の日本青年館で公演されている宝塚歌劇・星組公演『ジャン・ルイ・ファージョン-王妃の調香師-』を見て来ました。
これは、星組がトップスター柚木礼音(ゆずき・れおん)さん率いる全国ツアーと、こちら青年館の紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん主演のこの「ジャン・ルイ・ファージョン」に分かれて公演を行っているもので、次期トップスターと目される紅さんの重要な主演公演となります。
脚本は、私の大好きな植田景子先生。毎回舞台で展開される物語には、“太い芯”のようなテーマが見え隠れするのが特徴で、私はそのテーマを見つけていつも感動してしまうのです。
舞台は18世紀のフランス。
ルイ16世、王妃マリー・アントワネットの命がギロチンの露と消える直前からその後までの革命の混乱と権力争いの中でのお話でした。
主人公の調香師、ジャン・ルイ・ファージョンを紅さんが演じルイ王朝、アントワネットらの王族に香水を納めていたことで反革命派の嫌疑を受けて囚われの身となり、その裁判の様子と、過去の回想からストーリーは展開されます。
紅さん演じる調香師の一途で、香りにかける人生そのものが先ずは心を打ちます。
紅さんの普段からの舞台上での演技、歌唱、ダンスそれぞれに隅々まで公演中も研究している姿がオーバーラップしてきます。
一般に揶揄されるマリー・アントワネットではなく、王族として、ひとりの人間として、そして女性としてくじけずに自分らしく生きて行く王妃を期待の若手早乙女わかば(さおとめ・わかば)さんが演じて、これも美しく、たおやかな姿がとても良く描けていました。
幽閉されている場所から逃亡をする前夜の紅さんとのやり取りも迫真の演技でした。ぐっと引きつけられるような迫力、見事でした。
もう一人期待の若手、真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんも、王妃を愛してしまい、王妃逃亡の手引をするフェルゼン伯爵を何ものにも負けない信念のある男として力強く演じていました。どんどん良くなりますね、真風さん。
そして、紅さん演じる調香師の妻を演じた綺咲愛里(きさき・あいり)さんも、実に美しく、可憐で、見ているだけでうっとりする美貌でした。しかも何があっても夫を信じ、ついていく耐える妻を静かですが哀しく演じてなかなかのものでした。
当日は、ロビーにムエットと呼ばれるカードとローズオードトワレがセットされ、そのカードにトワレをシュッと吹きかけて香りを楽しむコーナーなどもあり、雰囲気を盛り上げていました。
やさしい良い香りでした。
今回の演目では、音花ゆり(おとはな・ゆり)さんの歌唱もいつもながら素晴らしく、さらに紅さんを裁判で攻めまくる革命派の検事を演じた汐月しゅう(しおつき・しゅう)さんも観客席を「ああ、またこの男がジャン・ルイを追い詰める・・(^_^;)」と、じりじりさせるほどのいい演技でした。
うまいなぁ、と見ていました。この公演でのMVPかもしれません。2004年初舞台なんですね、いい役者です。
今回の植田先生のテーマは、舞台は18世紀のフランスでも、現在の世界、特に日本の状況に何か投げかけているような気がしました。
香水という、当時は日常品や薬品としての機能もあったようですが、“エレガンス”という・・つまり人が日常あくせく働いて何か忘れがちなもの、それが人として生きていくことに大切なのだということが含まれていたと思います。
文化、芸術、創造・・というものから人は今、離れすぎていないだろうか・・そんなことを私も舞台を見ていて感じました。
あくせくと仕事と時間に追われ、心のゆとりなくただ過ぎていく日々。
それが現実で、しかも結果は数値などでほとんどが語られ、心のひとかけらも差し挟まれる余地のない現状。
自分の心の中にわずかでも“たいせつ”なものを持ち続けよう・・そんなことも見ていて感じたのです。
植田景子先生の作品、いつも感動させられます。
今回は、裁判も大詰め、紅さんが上記のようなことを含め、思いの丈を訴え、人々の共感を呼ぶシーンで、さざ波が立ち、押し寄せるように感動が体中にひろがりました。そして・・涙が・・・。
いい作品でした。それにオマケのショーも、日頃見ない感じの素敵なものでした。
短かったけど、とても良かった(*^_^*)
紅さん、またファンが増えましたよ!(^-^)☆
【NowPlaying】 木漏れ日 / 松谷卓 ( InstrumentalMusic )
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