Jimmy's Birthday アメリカが刻んだ「死の暗号」・・Jimmyとは誰だと思いますか
『東條英機処刑の日(Jimmy's Birthday 改題)/猪瀬直樹著(文春文庫)』を読みました。書店で見つけたときには気付かなかったのですが、これ、都知事になった猪瀬さんの著書だったのですね。立ち読みしたときには気付かなんだ(^_^;)
話は、とある女性から猪瀬さんに来た手紙から始まり、その女性の祖母が子爵夫人であり、子爵夫人が残した日記に「ジミーの誕生日の件、心配です」と書かれてそれが最後になっていて、猪瀬さんは気になったわけです。
日付は昭和23年12月7日で終わっていて、その日記を読んでいると終戦当時のところからの動乱が記されています。
読み込んでいくと、子爵夫人の息子は学習院の小学生で、現在の天皇陛下と同級生。
奥日光に疎開して、終戦時の混乱を避けていたばかりでなく、「終戦の詔勅」間際の蜂起して米軍と本土決戦をしようという軍の一部から身柄を拘束されるのではないか、また逆に米国が拉致しようとしているという情報も有り、金精峠を徒歩と籠で越えて会津若松に逃げ延びようとしていた事が書かれているのでした。・・・そんなことがあったとは知りませんでした。
そして、当時の皇太子明仁は疎開先での英語の授業で「Jimmy」と呼ばれていたのです。
日記を読み込んでいくたびに敗戦からマッカーサーやその側近が天皇をどうしようとしていたのか、日本国憲法に何を盛り込むのか、猪瀬さんの調査と共につまびらかになっていきます。
連合国軍総司令部でマッカーサーのもと、新憲法草稿に大きく関わったケーディスと子爵夫人が深い仲になっていく様子も描かれていて、物語としても読者をぐいぐい引き込むのですが、そのあまりにも興味深い内容はぜひともこの本を読んで味わっていただきたい。
東京裁判での各国の動向、被告人の様子や、戦犯処刑の模様も記述されていて、処刑はなぜか、わざわざ日付が変わる瞬間を待って行われました。
それが、現在の明仁天皇の誕生日を待ったものでした。
国民の祝日である天皇誕生日にA級戦犯を処刑して、その日に国民に祝わせるという・・数十年後を見据えた計画です。
しかも、当時子供だった明仁天皇には一生涯その重荷が背中にのしかかることになりました。
上記のことを知って、平成17年に天皇皇后両陛下がサイパンに慰霊に行かれ、断崖の突端に立ち、並んで頭を垂れる姿を思い出しました。
あの光景は戦争を知らない私にも強烈に胸に迫るものがありました。
天皇誕生日以外にもマッカーサーが仕掛けた時限装置があります。
極東国際軍事裁判(東京裁判)でA級戦犯28人が起訴されたのは、昭和21年4月29日(昭和天皇の誕生日)、裁判開廷は5月3日、翌22年のこの日に新憲法が制定されています・・・。
東條英機らA級戦犯7人が処刑されたのは、昭和23年12月23日。
当時の皇太子、現在の天皇陛下の誕生日です。
この本の副題が「アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」です。
実はこのこと自体は高校のとき、世界史の先生に教わっておりました。
「みんな、アメリカがしたことを忘れてはいけない」と先生はおっしゃいましたが、あのとき以来忘れることが出来ず、そこで浮かれる日本人を正視することができないためディズニーランドにも行かない私が今ここにいるわけです。
とても読みやすく、物語的にも興味深く読めます。おすすめしたい一冊のご紹介でした。
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