ゆめまぼろしのような小説
『龍宮/川上弘美著(文春文庫)』を読みました。
川上さんの小説には、私の大好きな「センセイの鞄」がありますが、今回読んだのは八編の短編からなるこの「龍宮」です。
読み始めると、あまりにも不思議で得体の知れないお話ばかり。
蛸(タコ)なのに人間の世界で飲んだくれては女を追いかけ、しかも“モテる”男の話。姿形は人間なのに、くねくねと“蛸的”な印象でもって、ふと知り合ったニートの男性に酒をおごってもらいます。そして女などについて語ります。
かつては、北斎の「蛸と海女」のモデルにもなっているという・・・奇想天外なお話。
そして、七代も前の先祖に恋する女。でも七代前のその先祖はアパートで現在一人暮らし??というわけがわからない設定なのに、恋心についてはしみじみとわかってくる話。
海から上がってきた生物であるのに人間の男に拾われ、結婚し、その夫から次の夫へと引継ぎをされて、また別の男の妻になる女の話。
ほんとにもう、わけがわからないのに、よくわかる!?(-_-;)
心情的にはなんとなくわかるのに、ストーリーそのものは非現実の世界という特異なものでした。
でも、私には「この先どうなるのか」、「いったいこの女の正体は」などと先を読み進まねばいられない、魅力的な短編集でした。
この読後の“不思議感”は初めて味わうものでした。
マニアック・タイプの読書家におすすめですよ。
【NowPlaying】 Memory Motel / The Rolling Stones ( Rock )
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こんばんは
「センセイの鞄」はわたしも読みました。よかったですよね。わたしも好きな本です。
「竜宮」は未読です。
面白そうですねえ。
不思議なお話、好きなんです(笑)
今度読んでみたいと思っています。
投稿: みい | 2013/03/22 21:28
みいさん、コメントありがとうございます(*゚▽゚)ノ
この「龍宮」は、あの「センセイの鞄」とは全く異なる作風で、別人の作品かと思ってしまいます。
でも、作者独特の男女の見方は読んでいくと同様に深く、おもしろいものです。
まるで夢でも見ているかのような奇想天外なストーリー、おもしろいですよ!(*^^*)
投稿: はっP | 2013/03/23 06:25