【ビートルズひとり雑談・第十談(『アナログ・ミステリー・ツアー』・・空恐ろしい本)】
『アナログ・ミステリー・ツアー 世界のビートルズ 1967-1970 /湯浅学著(P-Vine BOOKS)』という、とんでもない本を読みました。
これは、ビートルズの世界で発売されたレコード(アナログ・ビニール盤)を次から次へと試聴し、ビートルズの音楽そのものではなく、もちろんオーディオ器機の試聴でもなく、その“レコード盤ごと”にどんな音が入っているか聴きまくるという・・・私が考えたこともないチャレンジの実況中継的な本なのです。
本家イギリス盤や、アメリカ盤、日本盤はもとより、フランス、ドイツ、ジャマイカ、オランダ、インド、ブラジル、ロシアなど、手に入ったアナログ盤をレコードプレイヤーのカートリッジまで様々なものを試しつつ聴いていきます。
「ポールがやる気がない」とか「ジョンだけ浮いている」とか、「リンゴが喜んでる」などなど、“ほんとうにそう聞こえるのか?!”と思わず突っ込みを入れたくなるのですが、総頁数320ページにも及ぶこの“聞き比べ大会”がそんなシャレや冗談で持つわけがありません。
・・“マジ”なのです(^-^;
国ごとの音の好みもあるだろうし、ロックそのものをどう捉えているのか、ということもあるでしょう。
それに、カッティング段階での職人の技量や好み、仕上げの差も大きいようで、どのページから読んでも著者ともう一人の進行役で進められるその“ノリノリ”な試聴状況に、ただ唖然とするのみです。
音の例えもマニアック過ぎてよくわからない部分も私には多々ありました。
国によっては、レコード盤そのものから“盤起こし”してプレスしたものまで現れ、それをすぐに見分けてしまう二人には驚き、さらに実際に販売されていたレコード(日本盤「ヘイ・ジュード」もそうだった)が『逆位相』だったりすることまで簡単に突きとめます。
※逆位相:スピカーコードが「+」と「-」逆に繋がれた時などに見られる違和感のある音のことです。経験ある方もいらっしゃると思いますが。
もう、“悪ふざけ”ギリギリの会話と試聴姿勢の二人の会話に圧倒されつつ読んでみるのもいいと思いますが、ポイントはビートルズのどのアルバム、どの曲でも頭の中にスッと思い浮かべることができないと、何を言っているのかさっぱりわからないということです。
逆に言うと、ビートルズみたいに多くの人がその曲と音を思い浮かべることができるアーティストでないと、こういう本は成り立たないと思うわけです。
ビートルズのアナログ盤に、まだ未練があるマニアの方、アナログ中心に音楽をこれからも聞いて行きたいという方には価値ある本になるかもしれません。
【NowPlaying】 We Can Work It Out / The Beatles ( Rock )
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