つげ義春の“貧困”旅行記
またまた、ストックしておいたものをアップいたします。
今回は「読後感」をひとつ。
『新版・貧困旅行記/つげ義春著(新潮文庫)』を読みました。
読みもしたのですが、つげさんがかなりの数旅行した全国の温泉などの写真も豊富です。それも、つげさんのマンガに登場するような場所ばかりだ、と思いつつ見入ったのでした。
とにかく行く先々が“ひなびた”を通り越して、寒村と言ってもいいくらいの寂れた温泉場や、鉱泉の出る村の宿で、客が来るのが珍しいくらいの宿ばかりで、つげさんらしいと言えば“らしい”のですが、あまりにも寂しく隔離されたような場所ばかりが紹介されています。
誰もこういう宿・旅籠を対象にして文章は書かないだろうと思いました。ということは、どこを探してもこの本に出てくるような宿を紹介しているメディアは無いだろうという結論に達しました。
見ず知らずのファンから手紙をもらい、自分自身は東京のアパートから蒸発して、九州まで会いに行き、結婚してしまおうかとする著者のあまりにも唐突で理解しがたい行動にも驚かされました。
ひとり旅館でひまになり、ストリップ小屋に出かけて行ったかと思うと交渉して外に連れだし、関係を持ってしまう著者、その行動力というか、後先考えない姿勢にも驚きました。
そうそう、つげさんが紹介していた岩手県の夏油(げとう)温泉には私も家族で行ったことがあるのですが、大秘境でした。
当時、この旅館の電話は、通常回線がなく、公衆“無線”電話のみで、山奥のこの旅館、外界とはほとんど接触がないような印象でした。
それに、湯治客が自炊して生活している棟などのたたずまいは、まさに“つげワールド”な光景でした。
温泉そのものは、屋外の川沿いにあり、洞穴のようになっている中に入っていくと温泉になっていたりしました。
夏油温泉には、いくつものタイプの温泉があったと記憶しています。
房総半島にもやってきたつげさんの養老渓谷や丸山町での様子も描かれていて、興味深く読みました。
素敵な温泉場の紹介ではまったくありませんが、その“ワールド”にひたり、読んでいるうちに寂しくなる旅行記・・興味があったら手にとってみてくださいな。
【Now Playing】 NORTHERN BAR(北酒場) / シーゲル梶原:梶原しげる ( 洋風歌謡曲 )
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