今夏のロミオとジュリエットを振り返る
以前にも4回に渡って観劇記を書いた今夏の宝塚歌劇・星組東京公演『ロミオとジュリエット』、既に二度目の観劇をしておりましたので、他組との比較なども含めて再度書いてみたいと思います。
残念ながら役替わりのあるこの公演でのBパターンを見ることはできませんでしが、二度目のAパターンを見ての感想です。
各自の役は、かなり“膨らんで”きた印象でした。
特にベンヴォーリオ役の礼真琴(れい・まこと)さん。
さらに豊かな表現力を身につけ、独唱の部分では私が見た回では、歌いきった瞬間、観客席から声になるともならないような「よくなったなぁ・・」といううなり声のようなものが上がりました。私も星組の主要男役のひとりになったな、という印象を持ちました。
主演の柚希礼音(ゆずき・れおん)さんは、宝塚で初演したロミオ役を「柚希ロミオ」の完成形にまで築き上げたのではないでしょうか。
普段は明るく真っ直ぐな少年ではあるが、繊細で小心な部分も陰の部分で持ち合わせ、しかしあふれる熱情が時に自らを奮い立たせて思い切った行動に出る。
立派で逞しいところを見せたかと思うと、硝子細工のように壊れやすい部分も見せる。
柚希さんのロミオ、見どころたっぷりでした。
私は初演の柚希ロミオを見ていないのですが、その後の雪組・音月桂(おとづき・けい)さん、月組・龍真咲(りゅう・まさき)さん、明日海りお(あすみ・りお)さんのロミオを見ているので、それらと比較してみると・・。
音月さんのロミオは一番少年らしい印象でした。
そして挿入歌「僕は怖い」が一番似合っていたと思います。
トップとしての初の大舞台でしたが、あの壊れそうな繊細さと、愁いを含んだ美しい歌唱はなかなかのものでした。舞台全体を通して、幸せがいつ壊れてしまうのかという緊迫感が漂っていました。
龍さんのロミオは、“無垢”な感じ。
ジュリエットと共に、汚れない、純粋な青年(少年?)という印象でした。
それが相手役、愛希れいか(まなき・れいか)さんにピッタリと合って、綺麗なロミオとジュリエットでした。
明日海さんのロミオは、一番、現代にもいるような青年に近くなっていて、喜びも悲しみも“等身大”!
それがまた相手役、愛希さんとしっくりとかみ合って愛する喜びにあふれたロミオとジュリエットになっていました。
さて、もうひとりの主演、夢咲ねね(ゆめさき・ねね)さんのジュリエット。
夢咲さんには、きっとジュリエットとはこういう娘、女性であるという像が作り上げられていて、自分でどこまでジュリエットという世界中の恋愛感の中心にある人物像を構築できるかが、自らの挑戦となっていたことと思います。
愛・恋に対する少女の憧れや、実際に理想と思われる男性と知り合ったときの喜び、一直線に恋に落ちる姿、歓喜と悲劇の急展開に翻弄されるひとりの女性を“夢咲流”に描き出していたと思います。
今回の星組二度目の「ロミオとジュリエット」、柚希さん、夢咲さん二人の代表作としてファンの心に刻まれる「快演」であったと思います。
雪組公演では、ジュリエット役は役替わりで二人いたわけですが、東京で夢華あみ(ゆめか・あみ)さんは休演して見ることができませんでした。
もうひとりのジュリエット、舞羽美海(まいはね・みみ)さんについては、もう必死で音月ロミオについて行くという印象でした。まだトップ娘役としても認められていなかったわけで、気の毒にも感じましたが、でも、その健気さが逆に舞羽さんの持ち味をどんどん出していて、ロミオにずっとついて行く、一途な感じが良かったと思いました。
月組公演のジュリエット、愛希れいかさん。
彼女のジュリエットが一番、“原作のジュリエットっぽい”のではないかと思いました。「まだ何も知らない16歳」という舞台上の台詞にあるような、そんなジュリエットには愛希さんは可愛らしいそのルックスや、舞台上の演技、所作共にピッタリだったと思います。
今回の観劇記は、主演に絞り込んで書いていますが、そのほか目立ったのが、娘役の妃海風(ひなみ・ふう)さん。
モンタギュー家の“青組”に入っていたのですが、舞台狭しと飛び回り、元気良く、力強く、悲しいところでは持ち前の見事な表現で、“目立ちまくり”でした。
ラスト近辺の、ロミオとジュリエットが亡くなり、両家が悲しみの中歌い上げる部分では豊かな感情表現を見せ、頬に涙がきらりと光っているのも発見しました。
フィナーレでのうれしそうなお顔もとても可愛らしく、この人は舞台の端にいても何かを放っています。これからも気になる星組の娘役です。
その他主要な役どころでは、真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんの「死」の舞台上の脚の運びが軽やかで美しく、ダンスは力強く、より練り上げられていました。
ティボルト、マーキューシオの紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん、壱城あずさ(いちじょう・あずさ)さんも、その人物像がよりくっきりと描かれていたと思います。
天寿光希(てんじゅ・みつき)さんのパリス伯爵は、単に“間抜け”なキャラクターではない、というところまで描くことに成功していたと思います。難しいところにチャレンジしていたのを私は見逃しませんでした。
まだまだ書き足らない部分ばかりですが、長くなってしまいましたので、今回のロミジュリ観劇記はここまで。
この公演後は、柚希さんのコンサート部隊と、真風さん主演の公演部隊に星組は別れるのてすが、果たしてどちらかひとつでもチケットが手に入れば、またこのブログで観劇記を書こうと思います。
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