父は空 母は大地
いつも気にかけてくれて、手紙などをくださる中学時代の担任の先生。
先日は詩集を二冊送ってくださいました。
きょうはそのうちの一冊をご紹介します。
『父は空 母は大地/寮美千子編訳(パロル舎)』です。
これは1854年、アメリカの第十四代大統領フランクリン・ピアスが先住民たちの土地を買収し、居留地をあたえると申し出、翌年先住民の首長シアトルが条約に署名。
そのとき、シアトル首長が大統領に宛てた手紙を翻訳したものを詩集としたものです。
きょう、美しく晴れ、あしたは雲が空をおおう、私の言葉は星のように変わらない・・・どうしたら空が買えるというのだろう?
わたしにはわからない。
風の匂いや水のきらめきをあなたはいったいどうやって買おうというのだろう?
と、書き出されています。
この地上にあるものは松の葉一本、虫の一匹、すべては私たちの遠い記憶の中で神聖に輝くもの。
このあと先住民たちが慈しんでいる鹿、大鷲、熊、岩山、草原のみずみずしさ、小馬の体のぬくもりなどについて書かれ、それらは同じひとつの家族のものだと説きます。
で、白い人よ、あなたもその家族なのになぜそれらを買おうと言うのかと・・。
白い人よ、「あなたの兄弟にするようにそれら当たり前の存在にやさしくしてほしい」と願っているのですが、このあと人の生き死にはその自然の中で営々と続く、と詠われていきます。
その後、白い人が大地を売り買いし、むさぼりつくし、砂漠しか残さないことを予言しています。白い人のつくった景色は目に痛く、白い人の町の音は耳に痛い・・とも書かれていました。
読んでいて、“白い人”の発想である「発展」と「成長」が人類にとって一番に求められるものだという考え方はどんなもんだろう・・と何度も思いました。
便利だ便利だ、と作っておいて、それがいったん事あると何万年もしないと元の地球に戻らないものだと知っても、もうそれを忘れたかのようにしている人・・。
60頁程度の詩集なのですが、あまりにも深く、衝撃的なものでした。
私の心にも大きなものが残りましたが、あの人にも、この人にも読んでもらいたい・・などと思いました。
先生は、リタイア後、昨年大病をされ、大きな手術を受けました。
そしてきっとこういった詩にも目を向けられ、私にも読んでみてもらいたいと思ったのだと思います。
またひとつ宿題をもらったようです。
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