日のあたる方へ(宝塚のジキルとハイド)
日本青年館で公演のあった、宝塚歌劇団・星組「真風涼帆(まかぜ・すずほ)」さん主演のミュージカル『日のあたる方へ -私という名の他者-』について感想を。
星組期待の本格派男役、真風さんがスティーブンソン作の「ジキルとハイド氏の奇妙な事件」宝塚版に取り組んだ意欲作です。
真風さんは、ルックスも宝塚男役として申し分のない雰囲気を持っており、しかも演技も歌唱もダンスも毎公演積み重ねる毎にみるみる上達している印象があります。
宝塚版のこの作品は、真風さんを精神科医として、精神に疾患を抱える女性、マリア「妃海風(ひなみ・ふう)」のため、自ら認可されていない新薬の被験者となります。
そして、真風さん演じるジキルには封印された過去があり、心の奥底に潜むトラウマが別人格として現われ、事件に・・・。
薬を飲み、人格が変わる部分の唐突さと宝塚ではあまり見ない光景に客席は戸惑いを隠せないように感じました。
真風さんの演技がどうというよりも、“宝塚”をいつものように楽しもうとしてやって来た私のようなお気楽な観客にはちょっと“きつい”ものがあったかもしれません。
それに、真風さん演じるジキルの人物像がそれほど深く書かれてるわけでもないので、そんなことになるに至った経緯にも理解が及ばぬ状態で怖ろしい事件の只中に連れてこられて・・見ている側が気持ちをそこまで持って行けるのかがちょっと難しいと思いました。
相手娘役、妃海風さんにしても、記憶を失い、ただ訳の分からぬ歌を人形のように歌っている部分が前半を占め、あとでわかってくるものの、妃海さんの人物像もよくわからないままストーリーが進行して、しかもジキルとハイドだからきっとこんなことになるのであろうという想像がつく展開で、見ているこちら側には一本調子で“枝葉”のない印象はぬぐえませんでした。
後半、ストーリーが事件をきっかけに急展開してくると、それぞれの役どころが個々の人格を持って生き生きと動き出し、おお面白くなってきた(゚ー゚*)となり、そこからは客席も暖まってきた感覚がありました。
それでも、人殺しをしてしまったにも関わらず、妙に警察の病院でゆったりとしている主人公や、周囲の人物達にもちょっと違和感を感じました。
さらに、ラストおまけのショー部分では、ちょっと陽気過ぎやしないかい?と思うほどの部分もあって、演じた星組の皆さんよりも、この作品自体がもう少し宝塚的に練られていればよかったのに、と思ったのでした。
・・と、そんなことを言いつつも、真風さんは素晴らしかったし、妃海さんは若手なのに、相変わらず堂々として個性を発揮していましたし、天寿光希(てんじゅ・みつき)さん、十碧れいや(とあ・れいや)さんはじめ、周りを固めた星組の面々、力のあるところを見せてくれました。
結果として宝塚としてはちょっと難しいと感じる舞台でしたが、星組の力量を感じた公演でした。
【Now Playing】 Lucy In The Sky With Diamonds / The Beatles ( Rock )
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