川上弘美さんの「これでよろしくて?」
『これでよろしくて?/川上弘美著(中公文庫)』を読みました。
これもブックオフで105円也(*^^*)
不思議な本でした。
とある夫婦・・子供はまだ無い・・、主人公はその妻の方。
夫のひと言に苛立ったり、気が滅入ったり、毎日いろいろとあるのだが、何とか暮らしていると、その妻の元彼の母親から街で声を掛けられ、女性だけの年齢もまちまちな「これでよろしくて?同好会」に加入することに。
不定期にレストランに集まり、男女間、夫婦間、家族間、親戚間の話題を“元彼の母”がリーダーとなり、大学ノートにテーマと結論めいたものを記入していく・・・不思議な同好会が開催され、主人公も最初は半信半疑ではあったが、やがて積極的に参加するようになります。
そんな最中、夫の弟夫婦と同居していた「ママン」と呼ばれる姑が嫁と折り合いが悪くなり了解も得ず主人公夫婦の家に同居を始めます。
三人での生活が始まり、主人公は「ママン」をどう思えばいいのか、夫は何をやってるのか、・・などなど悩みの日々を送りますが、それも「これでよろしくて?同好会」の話題となるのです。
そして、集まる女性達は勝手なことを言ったり、深いことを言ったり、どういう意味か図りかねることを言ったりするのです。
この主人公は、漠然と不安感を抱えたりしているのですが、実は実生活でも女性はそういうふうに感じているのではないかと思いました。
「どうして人様の前に出ればまがりなりにもきちんとできる妻や夫が、家の中ではこんなに瑣末なことで打撃を受けたり、険悪な仲になってしまったりするのか」・・と同好会のメンバーに問いかける主人公。
どこの夫婦もこんなものじゃないかと、読みながら私も考えました。
主人公はひとつの結論として、「それは、相手を好きだから。相手に関心を持っているから。相手を思うから些細なことが気になるし、些細なことに嫉妬するし、些細なことが自分を打ちのめすのです。」という回答を導き出します。
同好会メンバーのひとりからは、“かわいくない答え”として、「相手が憎いから。だから些細なことが気にさわるし、些細なことに腹が立つし、些細なことが自分を打ちのめすのだ。」と全く逆の回答を導き出します(^^;)
・・・「好きって、憎いに変わっていきやすい」・・とも。
『嫁姑とか、世間さまとか、過酷な会社生活とか、うまくいかない男女関係とかに疲れ果てた生前を持つ親切なおばけがあなたのために化けて出て、妙な同好会活動をおこなってあげたというわけなのよ。』・・と、ふざけてメンバーが言うのですが、主人公の小さくて大きな悩みは、この「これでよろしくて?同好会」メンバーにより、だいぶ楽になっていたのは間違いなさそう。
主人公と同好会メンバーの“付かず離れず”な関係が、この本のストーリーを主人公だけでなく、“どこにでもいる”妻である読者の心の良薬にもなるような本でした。
川上さんの本は、どれも面白いです。
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