『居酒屋百名山』を読んだ
『居酒屋百名山/太田和彦著(新潮文庫)』を読みました。読んだというか、味わったという感じでしょうか。
前にもこの著者の「超・居酒屋入門」について読後感を書きましたが、今回も素晴らしかった・・感動してしまいました。
日本全国至る所に著者の“いきつけ”の居酒屋があり、馴染みになっている、そんな感じです。
銘酒を取り揃え、肴も土地の新鮮な魚介類などを美味しく食べさせてくれるお店を紹介しているのですが、それだけではありません。
その土地のその界隈の様子、店のたたずまい、店内の様子、お客さん達がその店に居る存在の仕方、さらに何よりも店主とその家族の様子も伝えられ、いい話がたくさん盛り込まれていて思わず、ほっ、とか、にこっ、とか読んでいて表情がゆるんでしまうのです。
実は読んでいて気になったのが、気仙沼の「福よし」というお店のところでした。著者が訪ねたのは震災以前、しかも文面には港町であり、海からほど近いところにその店は存在していて、内容を見るとそのまま修正したあとが無かったのです。
でも、著者のあとがきを読んでわかるのですが、著者は震災後この本に載った店をひとつひとつ訪ね歩いて安否を確認しています。
しかし、この「福よし」だけは消息がつかめず、その後一関で呑んでいると、その一関の居酒屋に全て流されたあと店の再開のために著者の書いた居酒屋などを勉強のため回っていた店主が声を掛けてきて、再会することになるのです。
その後「福よし」は再開。
著者の太田さんは、内容をいったん書き直そうとするのですが、港町の様子を書いたその時点の様子を残した方が気仙沼の良き姿を記すことになると判断してそのまま掲載されていたのです。
・・もう、私、そのくだりを読んでいるだけで(T_T)・・涙がこぼれ落ちました。
ほんとうに良い本でした。
それから、以前、私が仕事で松江に行ったときに松江の新大橋を渡ったところで見つけた「やまいち」も百名山のひとつとして掲載されていてうれしくなりました。とてもよいお店だったのです。
次から次へと入ってくるお客さんは、ほとんど地元の方ばかりのようで、つまり、美味しいことがわかっているから来ているのだろうと期待しました。
お店のおすすめで、「トビウオの刺身」と「しめ鯖」をいただいてみました。
トビウオの刺身なんて、千葉では絶対に食べられないものです。
そして、それが美味しかった・・。新鮮さがものをいう驚きの美味しさでした。
しめ鯖も同様、今まで食べていたしめ鯖とは完全に別物でした。これがほんとうのしめ鯖なのだと感心したのでした。
最後にいただいた宍道湖のしじみ汁も涙が出るくらいのうれしい美味しさでした。つぶの大きなしじみの旨さが汁いっぱい、そしてお腹いっぱいに広がりました。
・・おっと、私の思い出に話がそれてしまいました。
太田和彦さんの「居酒屋百名山」は私の居酒屋バイブルであると共に、心のバイブルになりそうです。
【Now Playing】 A Night At Tony's / Art Farmer ( Jazz )
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