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2014/01/13

『利休にたずねよ』今度は映画を見た

前回、この物語の小説についてご紹介いたしましたが、熱の冷めぬ内に映画を見てみました。
原作:山本兼一、監督:田中光敏、脚本:小松江里子、タイトルはそのままに『利休にたずねよ』です。

あの500頁に及ぶ長編の大作にどう挑んでいたのか、とても興味深く見ました。
小説中の個々のエピソードを網羅せずとも、また取り上げたものについても、そのまま再現はしなくとも、利休の美への追求は精緻に描かれていました。
私が小説を読んだときに描いていた光景がデジャビュでも見ているかの如く再現されているようで驚きました。

配役もなかなかのもので、ズレているような人はいませんでした。
特に亡くなった海老蔵さんのお父さん、團十郎さんが演じた武野紹鴎との共演にはふるえがくるようでした。
海老蔵さんの利休は、監督が最初からこの人と決めていたようで、まったく違和感のない印象でした。美を求め、美を畏れ、生死の境でそれを具現化しているかのような利休は、はまり役だと思いました。

その利休の妻・宗恩を演じた中谷美紀さんも名演でした。小説の宗恩よりも厳しさをました感じでしたが、真っ白い着物と雪の中のたたずまいがよく似合いました。
そして、利休切腹のあとの緑釉のかかった香合の扱いは・・驚きの小説とは正反対の「結末(・・と言ってよいでしょう)」でした。

高麗の女を演じたクララさん、細川ガラシャを演じた黒谷友香さんも好演。
若き利休が通い詰めた置屋の女将、たえを演じた大谷直子さんはまさに貫禄の演技でこの映画を締めました。

北政所を演じた檀れいさん、ふだんの発泡酒のCMは宝塚時代の彼女からすると、どうにも似合わないと思っていたのですが、このような秀吉の正妻で他を寄せ付けぬ骨太で華やかな姿こそが彼女の持ち味です。存分に彼女らしさを発揮していました。星組時代に宝塚版アイーダに出演し、恋敵を生き埋めにして高笑いする彼女を思いだしました。適役でした。

信長の伊勢谷友介さん、秀吉の大森南朋さんも、小説から受ける印象とはやや異なっていましたが、見事な演じ切り方だと思いました。


20140113_rikyu01

映像的にもとても楽しめましたが、私がふと感じたのは、写真の千数百の人々を集め、全国の茶人を集めた茶会で、利休の所に行列が出来、そこに秀吉が割って入り、「茶を飲ませよ」と言うシーンでした。
写真のとおりものすごく華やかなシーンなのに、中心の利休の座している処だけまるで葬式のようです。映像としても心情としても不思議で微妙な場面なのですが、どこかで見たことがあるような気がすると思ったのです。

20140113_sgt01

そう、ビートルズのサージェントペパーズのジャケットです。
そこには、世界中の有名人、各界の名士などが一堂に集まり、なんと過去のビートルズ達までもが極彩色の衣装を着たビートルズ自らを見守るように立っていて、まるで・・華やかな・・葬儀のように私はいつも感じていたのです。

アルバムの内容も、極彩色・満艦飾の音色なのに、シングルになりそうな曲はひとつもなく、音痴な歌手、大事に育てた娘に駆け落ちされた老夫婦、怖ろしげなサーカスの呼び込み、延々と続くインド音楽、ボートに乗って川を漕ぎ出すと、セロファンの花が咲き新聞紙で出来たタクシーの中からガラスのネクタイをしたポーターが現われる、鶏が鳴き動物達がもんどり打って走り抜けると人生の一日を振り返る人・・などと、なにか寂しいような印象の世界が繰り広げられます。

思わず、ビートルズの音楽は、美を求め、行き着く先は“侘び寂び”か!と時間と場所がフラッシュバックするような感覚に陥りました。

一気に小説と映画を味わいましたが、いいものに出会ったと心が満たされた数日でした。


【Now Playing】 チャイニーズ・ベルフラワー / GONTITI ( Guitar )

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