『利休にたずねよ』を読了・・人生に残る作品でした
映画化されたことによって話題となった『利休にたずねよ/山本兼一著(PHP文芸文庫)』を読みました。まだ映画は見ておりませんが、その前にと思って読みました。
実はこの本、ブックオフで見かけ、立ち読みした瞬間より手から離すことができなくなってしまいました。立ち読みしただけで“くらくら”するくらいの匂い立つような文に惹かれました。
掲載写真は、この文庫本が映画化に伴ってさらに上にカバーをかけたもので、実際には二枚目の写真のようなカバーがさらに下に控えていました。
『「ただ茶を喫するだけのために人が集い、同じ美を賞翫(しょうがん)する。その場に居合わせることのしあわせ。一座をつくることのこころよさ。」・・・こんなおもしろい人と人との愉しみがほかにあるとは思えない』、これに尽きる「茶の湯」という世界、日本人特有の世界が利休の人生と共にあまりにも美しく静かな文体で描かれ、ただその心地よさに身をまかせるほかありませんでした。
そして利休が懐に忍ばせる緑釉(りょくゆう)の香合に纏わる、利休の佗茶に隠された「美」そのものの秘密・・謎の高麗の女人との物語は小説では最後に語られていました。映画ではどうなっているのか・・・。
秀吉との茶室での互いに「美」にかけた生き方そのもののやり取りや、その場の設えと、静謐さと隠微の混じり合った空気は、ただもう息を呑むばかりでした。
利休切腹の前日から遡っていく物語の、それぞれエピソードの中で語られる利休が生けた花、素朴だが趣向を凝らした料理、茶、室・庭の様子などをただ見とれるように読むだけでもこの本を読むことの悦びがあります。
しかも、文体が簡素かつ鮮やかで、水が喉に沁みるように心に残っていきます。
良い作品でした。まだ映画はやっているはず・・・。
【Now Playing】 Sunspot / Horace Parlan ( Jazz )
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