沢野ひとしの本をしみじみ読んだ
『花嫁の指輪/沢野ひとし著(角川文庫)』を読みました。
相変わらずブックオフで105円・・(*^^*)
沢野ひとしさんと言えば、あの椎名誠さんの著書や、椎名さんの「本の雑誌」の不思議なヘタウマ(・・ウマヘタ?)な挿絵でおなじみの方。
八編の短編で構成されているこの本、どの話も妙にリアルな感触が伝わってくるのですが、まるで夢の中の出来事でもあるかのような儚いエンディングがとても寂しいのです。
どこまでが事実なのかわかりませんが、沢野さんが出会う女性は何を考えているのかわからない、不思議な個性を持つ人ばかり・・・。
出会ったときから壊れていくような関係が他の小説では見られないストーリー展開です。
どのお話も沢野さんが主人公となり、中には学生時代の男友達との話もありますが、皆、何か哀しい人生を引きずっている人ばかり。
沢野さんは沢野さんで、家庭もあり、奥さんも男女二人の子供もあるのに出会った女性と関係を持ち(そもそもこんなこと書いていてよいのだろうか・・でも、そんなこと気にしないのが沢野さんだ)、そして破滅に進んでいくのを自分で見守るようにしみじみと、楽しんでさえいるように感じるのです。
文中に出てくる沢野さんの高校は「市立千葉高校」であり、そのときのエピソードを読んでいると、その頃の千葉の稲毛あたりの様子も伝わってきたり、福生の横田基地でカントリーバンドの仕事をしているシーンなども当時の様子が偲ばれます。
淡い恋ごころと、少年時代、学生時代、社会人となってからの不倫の顛末、読んでいるこちらの心にも何かが棘のように刺さってなかなか抜けなくなる、そんな本でした。
【Now Playing】 Verdurous Mountains / 渡辺雅二 ( Instrumental Music )
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