「心中・恋の大和路」を観た
宝塚歌劇・雪組東京特別公演(日本青年館)『心中・恋の大和路 ~近松門左衛門「冥土の飛脚」より~』を観ましたので、その観劇記を。
雪組トップスター・壮一帆(そう・かずほ)さんは、すでに8月の東京宝塚劇場公演で退団されることを発表しています。そして、相手娘役の愛加あゆ(まなか・あゆ)さんも同時退団されます。
そんな中、日本青年館でのこの公演が“心中もの”ということで、なんだか二人の決意がそのまま“乗り移った”かの如く張り詰めた舞台になるであろうことが予想されました。
そして、やはり寸分の隙も感じられない引き締まった舞台となっていました。
過去に何度も再演されているこの演目は、“日本もの”も洋楽オーケストラをバックに演じる宝塚の素晴らしさを感動と共に味わえる極上の時間を与えてくれました。
大坂の飛脚問屋に養子に入った主演・壮一帆さんの亀屋忠兵衛は、新町の遊郭で馴染みとなった遊女・梅川(愛加あゆ)に“ぞっこん”となり、身請けをするために店の金に手を付けてしまい、どんどんと破滅へと向かい、やがて梅川と自らの故郷を目指して大和路に旅立つのですが・・何もかもを失い、梅川との恋を全うして死ぬしか途は無く、悲劇の末路を辿ることになります。
“日本もの”と言えば、雪組、多くの宝塚ファンがそう思っていることと思いますが、さすがの壮さんの雪組、そのとおり満点の近松ものを繰り広げてくれました。
遊郭で梅川が慕う「かもん太夫」を演じた大湖せしる(だいご・せしる)さんの水もしたたる“いい女”も抜群の演技とたたずまいでした。
壮さん演じる忠兵衛の脇を固める男役陣、そして同じ飛脚問屋仲間の男役達もキリッとした男役の演技と仕草、立ち居振る舞い、台詞のキレ、見事でした。
壮さんの実の父親役で、ラスト近辺で息子と相手の愛加あゆさんに対する絞り出すような気持ちの吐露を舞台中心で演じた専科の汝鳥怜(なとり・れい)さんの渾身の演技は大きな感動を呼びました。
また、ラスト、雪の大和路を死に向かって歩む主役二人をバックに熱唱・・、いやいや絶唱ともいうべきソロでの歌唱を聞かせてくれた未涼亜希(みすず・あき)さん、あまりの良さに客席の私は体が動かなくなるような深い感動に包まれました。
たぶん二十年以上宝塚を観ていますが、「歌」でこれほど感動したことは、ありませんでした。一生、心に残る歌唱でした。
コミカルなシーンで観客の心をゆるませたりするシーンもあり、また壮さんの亀屋忠兵衛の謂わば“どうしようもない男”の演じ方も絶妙で、“押す”だけではなく、“引いて”する演技も奥義のように繰り出す壮さん中心の雪組にはただただ感心するばかりでした。
いいものをまた見せてもらいました。
最後となる8月の東京公演まで、壮一帆・愛加あゆコンビの素晴らしさ、見せつけてくれることでしょう。
【Now Playing】 おもてなしは“利休”に学べ / 小早川護 ( NHK-AM )
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