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2014/05/24

偶然読んだ「夏の庭」

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『夏の庭 The Friends /湯本香樹実著(新潮文庫)』を、とある日、入るつもりも無かった本屋に引き込まれるように入って、ぐいぐいと本棚に誰かに背中を押されるように向かわされた先にこの本がありました。

何年に一度か、ですが、「読んでくれ」と本に呼ばれるときがあります。
今回がそうでした。
この200頁ばかりの薄い文庫本ですが、一直線にこの本に呼ばれ、結局購入して読みました。

これは著者の処女作で、国内児童文学界で高評価を受け、国外でも数多くの賞を受けたもののようです。
私、存知上げませんでした。

内容としては、小学生三人の悪友みたいな仲の良いグループが「人の死」に興味を持ち、通学途中にある、お爺さんの独り暮らしの家(ごみやその他がそのままでひどい状態になっている)を三人で観察し、死んだときにいち早く見つけて、人が死んだらどうなるのか見届けようとする、というのが序盤のストーリーでした。

でも、お爺さんに関心を持つ内に、お爺さんも尾行されたり庭に入られたり、家を覗かれたりしていることに気付き、やがて三人の子供達とお爺さんの交流が始まります。

ゴミを片付け、家を補修し、庭にコスモスの種を撒くなど、当初の目論見と全く異なる事態になり、子供達とお爺さんの付き合いは心温まるものになります。
そうする内に、やがて、本当にお爺ちゃんとの別れが・・・。
というストーリーですが、今までに私が読んだことのない展開と、作者の素直で爽やかな筆致に心の中が静かに澄んだような感覚になりました。

人の死と向き合う。そんなことも今の世の中、身近ではなくなりました。
子供にとってもですが、私たち大人も病院で亡くなるということが圧倒的多数となり、死そのものに直接触れ、実感することが少なくなっているように思います。

昨年秋に父を亡くし、ついこのあいだの日曜日に母をまた亡くしました。
父が亡くなったあと、急激に体調をくずした母は次々と悪いところが出て来て入院し、最後は容態が急変し、帰らぬ人となりました。

父が亡くなったときにも、いろいろと人の死について、親の死について考えましたが、母が亡くなり、またひとつ考えることもありました。
そして、偶然、妻が私たち夫婦が死ぬときのことを考えて、葬儀の形態や、宗教的行事をどう行うか、などについて書かれた本を二週間ほど前に買って見せてくれていました。

自分達がいよいよそんなことも考える歳に入ってきたのです。
もう一度、人の死について、自分の死について、夫婦の死について、家族の死について心を落ち着けて考えてみようと思っています。


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