「夫婦の情景・曽野綾子」を読んだ
『夫婦の情景/曽野綾子著(新潮文庫)』を読みました。
これもいつも通りブックオフで86円購入d(^_^o)
これは昭和54年刊行の本を昭和58年に文庫化、その後平成9年時点で四十二刷を重ねていますので、かなり発行部数の多い本だと思います。
タイトル通り「夫婦の情景」が31遍の短編によって描かれているのですが、それぞれが全く異なる夫婦であり、環境も経済的な状況も、境遇も様々なパターンの夫婦が登場します。
時代的には戦後を引きずったようなシチュエーションも有りましたが、でも、読んでいくうちに、その夫婦の境遇がきちんと伝わってきました。
時代が変われども、人と人の関係、夫と妻の関係、夫婦同士の関係の根底にあるものは変わらないのだな、とあらためて思いました。
特に夫が頑なで、それについて行く妻の“苦労”などは読むだに辛そうだなと思ったり、もう“諦めて”いる妻もいたり、そんな中、密かに心の中だけで夫の友人に心を寄せている妻がいたり・・と、いつの時代にもあるようなスリリングな展開の話もありました。
貞淑であらゆることに“きちっ”としている妻が亡くなると、まったく逆のルーズで礼儀もわきまえぬ若い女性と結婚してしまう夫が出てきたり、船乗りの夫が暴力的で、たまたま久しぶりに帰って来たときに、妻の妊娠を知り、自分の子かと、疑うどうしようもない夫も出てきます。
夫を亡くし、下宿していた十以上若い男性と結婚するが、結婚したときから「あなたを見捨てることはしないが、女をつくることは仕方ないだろう」と言う夫と、それをあえて認める妻・・。
夫婦にとって、何が幸せなのか、誰にもわからない。
傍目には幸せそうに見えても、裕福そうに見えても、立派そうに見えても夫婦崩壊の危機が間近に潜んでいる、そんなことが31遍の短編のあちこちに見え隠れしています。
善意や、やる気などというものが夫婦の絆に良い影響を与えるのかと言えば、そうでもなく、“諦め”が却って夫婦を結びつけたりする。
結婚って何だろうと考えれば考えるほどわからない深みにはまります。
この本に登場する女性も男性も、結婚に踏み切るときの様子が、「こんなもんでいいか」…(^_^;)という妥協というか、そんな感じが多いのも、現実により近い書き方をしているのではないかと思いました。
そんな、みんな「大恋愛」で結婚しているわけではないですからね・・。
とにかく、読めども読めども、ギクシャクした夫婦の営みが哀しくも味わいのある本でした。
結婚して十数年経ったくらいの男女共におすすめしたい本です。
あんまり真剣に読むとちょっと危険な香りもしますので、加減しながら読んでくださいな。
【Now Playing】 Things We Said Today / The Beatles ( Rock )
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