「しない生活」を読みました
『しない生活/小池龍之介著(幻冬舎新書)』を読みました。
著者、小池龍之介さんは月読寺・住職であり、そのほか一般向け座禅指導などもされていて、この本は朝日新聞に連載されたものをまとめたものだそうです。
現代人の人と人のつながりや、イライラすること、人への反発心、自分を変えたいと願う心、思わず人と自分を比べてしまうこと、などへの分析や宗教的な考え方などがエッセイ風に綴られています。
どの頁も「そうだよなぁ・・」と、頷いてしまったのですが、特に印象的だったのは、現在のネット社会にいる私たちについて書かれている部分です。
それが快楽指向から来るものであるというお話でした。
太古の昔、人は飢餓状態にあるのが普通で、糖質やタンパク質、脂質などが舌にふれると快感物質ドーパミンが分泌される仕組みになっていて、現代は甘くて脂っこいものがいくらでも手に入るので快感物質の分泌が止まらなくなる、快感量が多すぎるがゆえ、麻痺を起こし満足できぬまま食べ過ぎているというのです。
脳に「快」の刺激を与える頻度と強度が増すと「快」を感じる脳の装置が麻痺してしまい、かえって気持ち良さが減っていくという仕組みです。
常にスマートフォンで情報を得ている多くの人達は「自分が発信した内容に他人がどう反応するか」という情報について最も気にしていると著者は言います。
「自分が他人にどう見られているか」、要するに『自分情報』欲しさに情報端末に釘付けになっている、というわけです。
スマートフォンとなれば、四六時中・肌身離さず持っているので、「自分が相手にされている」という有力感(もちろんこの反対は無力感だ)を得て脳に強い「快感」が入力される。・・うまい説明の仕方で、私も思わずうなってしまいました。
なので、相手からの返信やコメントに「早く早く」という思いが強くなったりします。
今や携帯端末を通じた人との繋がりは強要されていると感じるくらいの状態です。
先に書いた糖質や脂質を摂取するものが人工的になったりしている今、自然素材のものでそれらを食べることが人の健康に大事なように、デジタルでの人との繋がり以外に、相対したりする別の繋がりが必要なのだと感じました。
インスタントに繋がらない、また繋がり過ぎない、むしろ孤独を味わうくらいの気持ちもある意味大事なのかもしれません。
人は脳への「快」を求め、麻痺するくらいの状態にすぐに到達してしまうのは、路上でも駅のホームでも、自転車に乗っている時でも、スマートフォンの画面に夢中になっている人たちを見て、実感することができます。
上記のようなことをわかりやすく説明した『人とつながり過ぎると「快感過多」で不幸になる』という章が一番印象に残りました。
【Now Playing】 守るべき人生 / 得田真裕 ( InstrumentalMusic )
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