小泉八雲集を読みました
『小泉八雲集/訳:上田和夫(新潮文庫)』を読みました。
460頁に渡りましたが、実に興味深く、面白いものでした。
前半は、怪談・奇談が集められ、ついで後半は日本観察、日本文化に寸する作品集が刊行順に収められていました。
怪談ものについては、今や日本人でさえその全貌が掴めないであろう数々の話が収められていて、日本人への八雲の聞き取り時にもけっこうあやふやな部分があったり、話が本筋から逸れるような部分もあって、八雲自身も文中で「どうなってるんだ」みたいなことを書いています(^_^)
怪談で目立ったのは、若妻が自らの命が短いことを知り、夫に「死後はこうしてくれ、誰かと再婚するのか?しないでくれるか、ああうれしい・・。」というような筋立てで、でも親類筋から再婚をすすめられた夫が妻を娶ると、様々な仕返しの仕方で化けて出てくる・・( ̄O ̄;)そんな話が多くありました。
また、修行僧などが山中で道に迷い、人家の灯りを発見してそこに一晩の宿を願うと、こころよく招き入れてくれるのですが、実はそこには・・怖ろしい事態が待ち受けているという話も多く、読んでいるうちに、落語でよく出くわす話であるな、と感じました。
特に怖かったのは、山中で十軒ほどの民家しかないところで泊めてもらうことになった僧が、「きょうは人が亡くなって、その晩は怖ろしいことが起こるという言い伝えが有り、村人は山から降りて、死人のみ供物と共に残して翌日戻ってくるのだが、あなたは僧だから一晩この村に死人と二人残るか? …σ(^_^;)・・と聞かれ、その僧が残り、経を唱えていると、怖ろしい鬼神のようなものが現われ、死体を全てバリバリとむさぼり喰い、供物も全て食べてしまう、という、メッチャ怖ろしい話があったりしました( ̄□ ̄;)
後半の日本文化に対する作品では、特に日本人の“薄笑い”しているような表情について、それがなぜなのか、実はこういうことなのだと思うぞ、というようなことが書いてあって、八雲も日本人を理解するのにだいぶ苦労した跡が見られました。このあたりも何度も読み込むと、現在の私達日本人の参考になることが色々と見つけられそうです。
八雲は、当初出雲の松江に住まい、その頃出雲にまだ残っていた古代からの奇妙な風俗、美しく霊的なものにたいへん惹かれていたようです。
でも、松江の冬の厳しさに、痛めていた眼(既に片目は失明していた)の容態が思わしくなくなり、熊本に居を変えたようです。
でも、熊本の豪快な風土には最終的には馴染めなかったようですね(^^;)
今回は、ボリュームたっぷり、興味たっぷりの「小泉八雲集」のご紹介でした。
【Now Playing】 Gray Shade Of Love / 青江三奈 ( Jazz )
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