久しぶりに読んだ「幸田真音」さんの小説
今回もブックオフ価格108円で『代行返上/幸田真音著(小学館文庫)』を読みました。
2003年頃の日本が舞台の金融小説です。
長引く不況の中、株価の下落に歯止めがかからず、不安感や閉塞感が蔓延し、日本の株式市場は追い詰められるところまで追い詰められているような状況下、年金改革の過程で出現したこの小説のタイトルにもなっている「代行返上」。
それにより更なる“売り圧力”がかかる、・・カネの匂いに蠢く外資系ヘッジファンドや年金基金関係者の苦悩、厚労省、企業等々それぞれの動きが約500頁に渡って“スピーディー”な時間経過と、濃厚な筆致で書かれているのがこの小説です。
しかもそれだけでお腹一杯になりそうなのに、登場人物が抱える人生の問題や、当時の働く女性に関する世間の考え方についての「疑問」についても全編に渡って漂うように描かれていました。
また、これも当時問題になっていた年金記録のずさんな管理についてもかなり踏み込んだ形で書かれていました。
今まで読んできた幸田さんの小説よりも“人間ドラマ”的な部分は踏み込みが浅い印象でしたが、「金融小説」としての内容があまりにも濃かったので、そちらまで書き込んでしまうと、焦点の定まらないものになってしまうのかもしれません。
なので、専門用語が解説も無しにバンバンとものすごいスピード感で登場して事態を進展させるので、一気に書かれている部分については分からない言葉ばかりで理解が難しい部分もありました。
この著書が国会での質問にも取り上げられたとのエピソードも後書きに書かれていましたが、あの時期の緊迫した、そして混迷した状況についての歴史的な資料とも言えるくらいの金融描写に、半分くらい意味が分からないものの、シビれるような感覚を伴って読むことができました。
幸田さんの濃厚500頁の限りなくリアルに近い金融小説でした。
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