美しい絵の崩壊( Two Mothers )・・衝撃の映画だった
『美しい絵の崩壊( Two Mothers )/アンヌ・フォンテーヌ監督:2013年・オーストラリア=フランス合作 主演:ナオミ・ワッツ、ロビン・ライト』を見ました。
主演のナオミ・ワッツ、ロビン・ライト演じる二人の女性は幼い頃からの親友で、いつも一緒に遊んでいた仲。
その友情は二人が大人になり、互いの息子が立派に成長してからも変わらぬものでした。
そして息子同士も仲の良い友達になっていました。
主演ふたりは、この映画全編に渡って繰り広げられる美しい海沿いの光景の中で、互いの息子達を「なんて美しいの!若き神々のよう」と感嘆しています。
その凜々しく美しい息子達は、互いの母の友人を第二の母のように慕い、良い時間を過ごしていたのですが、母の友人である年齢の離れた女性に、男と女が抱く感情を持ち、ある晩ロビン・ライト演じる母親がナオミ・ワッツの息子と一線を越えてしまいます。
ロビン・ライトの息子からそれを知らされたナオミ・ワッツの方は、「自分達も・・わかっているでしょう?!」と今度はロビン・ライトの息子から迫られ、いったんは拒んだものの、やがて禁断の果実を口にしてしまうのです。
もう、ここまでで驚いたのですが、衝撃はそれからもどんどん続きます。
例えば日本でこういう映画を作ると、ここから先はドロドロの関係と悲劇的なストーリーに一気に向かうのではないかと思うのですが、許されないことだと知りながら四人はある一定の期間まではこの関係を続けようという結論に達してしまいます。
ナオミ・・の方は夫を亡くしていますが、ロビン・・の方は夫がいて、何も知らずに自分の新しい赴任先に皆で引っ越そうとして拒まれ、結局赴任先で再婚してしまいます。
あまりにも美しい海辺の大自然の中で営みを続ける四人にもやがて人生の転機がやってきて、四人のうち一番理性的で知的なロビン・・が「尊厳を取り戻し、美徳に生きよう」と、涙ながらに切り出し、息子達は結婚し子どもをもうけるという大転換を図ることになります。
そして、美しい海辺で息子、その妻、孫たちと絵に描いたような幸せなシーンがやってきて、このまま過去の不思議な禁断の愛が育まれた蜜のような時間は想い出の彼方に消えて行くのか、・・とラストシーンを勝手に想像していると、さらなる驚きの展開と時空間が歪んで見えるような衝撃を受けることになり・・ものすごい映画だと思いました。
今までに見た映画の中でも最も印象に残る映画であったと感じました。
原作となった「グランド・マザーズ」の著作者、ドリス・レッシングは、この作品をも凌ごうかという人生を歩まれたようで、2007年、史上最高齢88歳でノーベル文学賞を受賞。長年候補にあげられながら受賞を逃してきた経緯から、受賞後のスピーチは“ノーベル賞を獲得しないことについて”だったそうです。
2013年、ロンドンの自宅で94歳の高齢で亡くなられています。
監督のアンヌ・フォンテーヌは、著作者に会い、年老いたイギリス女性という印象ではなく、“非凡でとても気力あふれる人”であったことに魅了され、さらにこの物語が実話から発生していることにも、驚きよりも“美しい経験”として感銘を受けたようです。
この作品は男の私から見ると、非常に新鮮で、原作も監督も女性であるこの映画は、まさに自分の考えなど遠く及ばないものであると深い感動を覚えました。
この映画は、一般上映館ではあまり上映されていないようです。
千葉でも「千葉劇場」くらいなのでしょうか。
美しい映像と共にしっかりと記憶に刻み込まれた映画となりました。
【Now Playing】 ロマンスの神様 / スタジオUSEN ( Jazz )
« ちょっと久しぶりに「石田衣良」さんの短編集 | トップページ | 小泉八雲集を読みました »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「ロスト・キング 500年越しの運命」を見てきました。(2023.09.29)
- 映画「青いカフタンの仕立て屋」を見ました。(2023.06.20)
- 映画「テノール! ~人生はハーモニー~」を見て来ました。(2023.06.10)
- 映画「パリ タクシー」を見て来ました。(2023.06.01)
- 映画「ウィ、シェフ!」を見て来ました。(2023.05.27)
「恋愛」カテゴリの記事
- 「抱擁/北方謙三」を読みました。(2023.10.13)
- 嵐山光三郎さんの「文人悪妻」を読みました。(2023.09.26)
- 吉行淳之介と開高健の対談形式本「街に顔があった頃」を読みました。(2023.09.05)
- 映画「青いカフタンの仕立て屋」を見ました。(2023.06.20)
- 「アガワ流 生きるピント」を読みました。(2023.06.18)
「家族・親子」カテゴリの記事
- 「見事な死/文藝春秋編」を読みました。(2023.10.10)
- 佐倉市立美術館で開催されていた企画展「IMAGINARIUM」を見てきました。(2023.09.25)
- 永六輔さんの「老い方、六輔の。」という本を読みました。(2023.06.29)
- 「アガワ流 生きるピント」を読みました。(2023.06.18)
- すごいタイトル「妻がどんどん好きになる」を読んだ。(2023.06.09)
コメント