「ウイスキー粋人列伝」を読んだ
『ウイスキー粋人列伝/矢島裕紀彦著(文春新書)』を読みました。
著者の矢島さんの数々の著書タイトルを見ると「あの人はどこで死んだか」「心を癒やす漱石の手紙」「名作を生んだ宿」「文士の逸品」「著名人名づけ事典」などが有り、どれもこれから読んでみたいものばかり・・(^-^)
今回読んだウイスキー飲みの達人、偉人?!達の愛飲史は、ウイスキーが日本に伝わって来た頃から現在の私達が身近に感じている芸能人まで対象が広く、とても楽しい読物になっていました。
一晩でボトル一本空けてしまうような豪快な人、ウイスキーはストレートでしか味わうことができないのだという人、水で割ることが日本人の繊細さを現すのだという人、さまざまです(*^^*)
日本にウイスキーが伝わったのは、嘉永六(1853)年、ペリーが浦賀に来た時で、当時浦賀奉行所与力の香山栄左衛門という人が船中で饗応を受けたときだそうです。
そこから始まり、90人以上のウイスキー好きの人物達の様子が書かれています。
ついこの間、このブログで内田百閒の「御馳走帖」を紹介いたしましたが、そこに書かれていたことも紹介されていて、90人以上の方々を調べ、こうして本にするまでには膨大な調査、研究、取材があったのだということが想像に難くありせん。
因みに巻末の主な参考文献の数はとても数えきれるものではありませんでした。
これだけの文献を探したり、めぐり会ったりするための苦労はたいへんなものだったでしょう。
ハードボイルド小説作家の北方謙三氏も登場しますが、夜の九時とか十時頃にいきつけのバーに行くと、カウンターにいる人が北方謙三だと気付くのを察知し、「オンザロック、TWハーパー(IWハーパーのIに横棒を引いたラベルをお店に頼んでつくっておいてもらう)」と、マスターが持ってきたボトルからロックグラスになみなみと自分で注ぎ、三杯ほど立て続けに飲み干すと、「じゃあな」と言って店を出る・・という演出(^^;)をするのですが、実は中身を烏龍茶にしてもらっていた、(*´▽`)なんてエピソードまで登場して、とても愉快でした。
またオンザロックを日本に持ち込んだのは、プロ野球監督の水原茂氏であったという話もありました。
昭和二十八年に米国サンタマリアで巨人軍がキャンプをした際に、ダンディで通っていた監督の水原氏がその飲み方に感服し、日本でオンザロックで飲み始めたのが最初らしいのです。
あの田中角栄が佐藤栄作を通じて初めて吉田茂にお目通りしたときの話もあり、吉田茂から帰りにオールドパー(吉田元首相の愛飲していたウイスキー)を貰い、佐藤栄作から、「オールドパー」を貰えたのなら気にいられたのだぞ、と言われ角栄氏が感激した話なども書かれていました。
とにかく、時代が幅広く、梅原龍三郎、北原白秋、井伏鱒二、坂口安吾、太宰治、源氏鶏太、升田幸三、向田邦子、岩浪洋三、はらたいら、林家正蔵、山崎まさよし、道尾秀介、・・・まだまだ足りませんが、それぞれのエピソードも極上の面白さでした。
ほとんどハイボールでしか、嗜まない私ですが、本格的なスコッチなども味わってみたいと思わせる内容豊かな本でした。おすすめ!d(^_^o)
【Now Playing】 Everything I Have Is Yours / John Jenkins ( Jazz )
« 「ベルサイユのばら」・・新境地 | トップページ | 「思い出のマーニー」公開日に家族で見た »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「お酒」カテゴリの記事
- 「居酒屋へ行こう。/太田和彦」を読みました。(2023.10.21)
- 伊集院静さんの「大人の男の遊び方」を読みました。(2023.08.14)
- 「予約一名、角野卓造でございます。【京都編】」を読みました。(2023.07.11)
- 「飲むぞ今夜も、旅の空/太田和彦」を読みました。(2023.02.18)
- 「私の酒 -『酒』と作家たちⅡ-/浦西和彦・編」を読みました。(2022.11.20)
コメント