月組・東京特別公演「THE KINGDOM」に出掛けた
宝塚歌劇・月組東京特別公演『 THE KINGDOM 』を日本青年館で観ました。
主演は月組で“ダブル二番手” ? ! という存在になっている同期同士、凪七瑠海(なぎな・るうみ)さんと、美弥るりか(みや・るりか)さん。
舞台は完全に二人を平等に扱う形で進められていました。二人には逆に試されている中での競り合いとなり、精神的にはきついのかもしれません。
内容は、同じ月組により昨年9月に東京で公演された「ルパン」のスピンオフ作品でした。
ルパンでの登場人物二人を主人公に東京公演時の「ルパン」からさらに時代は遡り、二人が学生のところから始まりました。
舞台は英国、ジョージ五世の戴冠式を目前に、反王政派の勢いが増し、さらにロシアでは皇帝ニコライ二世が危うい立場にいて、戴冠式を期に亡命を謀る動きもある中、主演の二人はジョージ五世とニコライ二世の間を取り持つヘアフォール伯爵の地位を継ぐことになった美弥るりかさんと、英国情報部で仕事をすることになった凪七さんの隠密裏の行動と、友情も描かれていました。そこにルパンも絡んでくるので、ちょっと話は入り組んだものになります。
凪七さん演じる情報部員は、上司も恐れぬ大胆な男、正義感も強く“男らしい男”という感じです。ちょっと勢い余る感じ。
美弥さんは、兄の暗殺と思われる突然の死からヘアフォール伯爵の地位を継ぐことになり、自らがロシア皇帝の亡命に大きく関わることになりますが、常に冷静かつ、クレバーな行動をする若き伯爵という立場でした。
お二人の演技は二番手同士で、しのぎを削っている現在、なかなか見どころのあるものでしたが、最後まで見ての感想としては、美弥さんが半歩リードしていたような気がしました。
また、今回相手娘役的な存在として、星組から組替えで来た早乙女わかば(さおとめ・わかば)さん※ロシア人留学生、と海乃美月(うみの・みつき)さん※凪七さんと同じく情報部員で、凪七さんの先輩役、のお二人になるわけですが、早乙女さんは星組時代、比較的「歌」が苦手な印象がありましたが、今回は歌唱を伴う場面も無難にこなし、相手娘役としては良い出来であったと思います。劇団の期待どおりの好演だったと思います。
一方、海乃美月さんは、凪七さんを相手に、振り回したり、怒鳴ったり、優しい面を見せたりの役を、まるでベテランのように達者に演じて、早乙女さんが80点の出来だとすると、海乃さんは100点満点を越えようかという素晴らしいものでした。
私もこれほどこの人がやるとは思っていませんでした。
月組は娘役の宝庫ですね。雪組に異動した咲妃みゆ(さきひ・みゆ)さんも素晴らしかったし、過去、蘭乃はな(らんの・はな)さんや、夢咲ねね(ゆめさき・ねね)さんも月組だったわけで、たいしたものです。
また、ベテランの瞳花ゆりの(とうか・ゆりの)さんの謎の女ヴィクトール役は、舌を巻く上手さ、このストーリーをぐっと大人のものとして締めてくれました。
亡命ロシア人・イワノフを演じた紫門ゆりや(しもん・ゆりや)さんは、相変わらずの男役としてカッコイイ演技を見せてくれ、花組への組替えが決まった鳳月杏(ほうづき・あん)さんは、情報部部長を演じ、しっかりしているかと思えばちょっとコミカルで、しかも深い人生経験をも感じさせ、この方も今回素晴らしい舞台でした。
また、情報部員でちょっと“おっちょこちょい”な感じを出した貴澄隼人(きすみ・はやと)さんも舞台を楽しいものにしてくれました。二重丸です(^-^)
さらに驚いたのは、早乙女わかばさんの留学生は高貴な身分で、そのお付きというかボディガード的な役を演じていたのが、期待の若手、暁千星(あかつき・ちせい)さんで、舞台の要所で、わずかですが、細かい演技が有り、その舞台でのたたずまいにも、台詞にも、なかなか落ち着いた良い演技が見られました。
最後オマケのショー的な部分でもあのスピンを交えたダンスで観客を魅了しました。
全体としてとても良い作品だと思ったのですが、作・演出の正塚晴彦先生は、最近いつも感じるのですが、シリアスな場面で突然ギャグを入れたりして、笑っていいのか、・・“不思議な間”が訪れることが度々あります。
あれは・・ちょっと馴れないというか、私個人としてはあまり“いただけない”感じがしました。
また、今回シャーロック・ホームズ(役:佳城葵/かしろ・あおい)が登場してから急に話の方向がややコミカルになり、大きく舵を切った印象が有り、それまでのシリアスさとの釣り合いが取れていないようにも感じました。
それに伴って、凪七さんが刺されたシーン(緊迫感が漂うはずなのに)では、あまりにコント的なギャグが飛び出して、観客は笑いましたが、・・ちょっと違和感を持ちました。
以上が今回の月組二番手同士が“W主演”した公演の感想です。
MVPは、鳳月杏さんと、海乃美月さんだと思います。お二人とも文句なしの満点でした。
月組二番手レースは、・・・まだまだわかりませんね(^^;)・・・。
【Now Playing】 ハンディング・ダウン / エドワード・ガーハード ( Guitar Instrumental )
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